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日本の中古車は、どこへ輸出されているのか

一年に百六十万台あまり。行き先の顔ぶれは、十年でどう変わったか

一年に百六十万台あまり。行き先の顔ぶれは、十年でどう変わったか

日本で使われた車の多くは、解体される前に、海を渡ります。リサイクル料金の返還を受けて輸出された車は、2024 年度に 163 万台でした。国内で解体に回った車の六割を超える数です。どのメーカーの車が、何年使われて、どの国へ行くのか。十年ぶんの数字を、自動車リサイクル促進センターと国の資料で読みます。

CHAPTER 1どれだけ出ているか

1-1 一年に 163 万台

輸出される中古車の数には、二つの数え方があります。一つは、国土交通省の輸出抹消登録の台数です。2024 年度(令和 6 年度)は 184 万台でした。制度が始まった 2005 年度は 107 万台です。

もう一つは、リサイクル料金の返還を受けた台数です。料金を預けた車を輸出すると、持ち主は返還を請求できます。自動車リサイクル促進センターが、その台数を毎年出しています。

FIGURE輸出でリサイクル料金の返還を受けた車(万台)
1492015
1342016
1442017
1502018
1542019
1182020
1342021
1292022
1572023
1632024

2024 年度は 163 万台でした。返された金額は 200 億円です。2020 年度に 118 万台まで落ちたあと、戻ってきて、この十年でいちばん多くなりました。

データBook は、2024 年度について、こう書いています。過去最高を更新した前の年度に引き続き、円安や強い海外の需要を背景に、高い水準で推移した。その影響もあって、使用済みの車の引取りは過去最低になった。

同じ年度に、国内で使用済みとして引き取られた車は 256 万台でした。輸出の 163 万台は、その六割を超えます。日本の車の出口は、解体と輸出の二つがあり、輸出のほうが太くなってきています。

1-2 半分は、トヨタの車

どのメーカーの車が出ているのでしょうか。データBook には、メーカーごとの返還の台数が載っています。

FIGUREメーカーごとの、輸出で返還を受けた車(千台・2024 年度)
トヨタ自動車828.0
本田技研工業193.2
日産自動車144.7
輸入車等140.1
マツダ83.6
スズキ63.7
SUBARU48.7
ダイハツ工業45.8

全体の 1,630.2 千台のうち、トヨタ自動車が 828.0 千台です。半分を超えます。二番目の本田技研工業が 193.2 千台、三番目の日産自動車が 144.7 千台です。トヨタ自動車は 2015 年度も 783.8 千台で、ずっと半分前後を占めています。トラックのメーカーでは、三菱ふそうが 23.8 千台、いすゞ自動車が 21.7 千台でした。

国内で解体に回る車の顔ぶれとは、かなり違います。解体では、軽自動車を多く作るスズキとダイハツ工業が二番目と三番目でした。輸出では、この二社は下のほうです。

軽自動車は、ほとんど輸出されていません。2024 年度の返還のうち、登録車が 1,524 千台、軽自動車が 106 千台でした。国内の解体では軽自動車が半分近くを占めるのと、対照的です。

輸入車などは 140.1 千台で、四番目に入っています。2015 年度は 98.7 千台でした。日本で使われた輸入車が、もう一度、外国へ出ていく数が増えています。

1-3 十一年ほど使われた車が出ていく

輸出される車は、何年使われた車でしょうか。返還を受けた車の平均使用年数が出ています。

TABLE平均使用年数(年)
年度輸出で返還を受けた車国内で引き取られた車
201510.114.9
201810.815.5
202111.716.4
202411.117.0

2024 年度は 11.1 年でした。国内で解体に回る車は 17.0 年です。六年ほどの開きがあります。

輸出される車の年数は、2021 年度の 11.7 年までのびたあと、少し若くなっています。国内で解体される車が毎年古くなっているのとは、動きが違います。

登録車と軽自動車で分けると、2024 年度は登録車が 11.1 年、軽自動車が 11.6 年でした。

ハイブリッド車も、多く出ています。2024 年度に返還を受けたハイブリッド車は 349,183 台で、全体の 21.4 パーセントでした。2015 年度は 6.3 パーセントです。国内の解体でのハイブリッド車の割合は 4.60 パーセントですから、輸出のほうがずっと高くなっています。

CHAPTER 2どこへ行くのか

2-1 2015 年度と 2024 年度の上位十か国

行き先は、財務省の貿易統計から分かります。データBook は、それをもとに、国ごとの台数を十年ぶん載せています。十年前と今を並べます。

TABLE中古車の輸出先の上位十か国(千台)
順位2015 年度台数2024 年度台数
1アラブ首長国連邦145アラブ首長国連邦227
2ミャンマー137ロシア192
3ニュージーランド118モンゴル108
4ケニア71タンザニア85
5チリ64ニュージーランド74
6パキスタン51チリ68
7スリランカ51ケニア67
8南アフリカ共和国46南アフリカ共和国55
9ロシア45タイ51
10タンザニア44フィリピン44

一位は、どちらの年もアラブ首長国連邦です。145 千台から 227 千台に増えました。

二位から下は、大きく入れ替わっています。2015 年度に二位だったミャンマー、六位のパキスタン、七位のスリランカは、2024 年度の十か国に入っていません。代わりに、モンゴル、タイ、フィリピンが入りました。

輸出の総台数は、2015 年度が 1,239 千台、2024 年度が 1,580 千台です。上位十か国の合計が全体に占める割合は、どちらの年も六割前後です。行き先は、少数の国に集まっています。

2-2 ミャンマーが消え、ロシアとモンゴルが増えた

十年のあいだの動きを、国ごとに追います。

ミャンマーは、2015 年度に 137 千台でした。2016 年度は 118 千台、2017 年度は 101 千台、2018 年度は 53 千台です。2019 年度には 67 千台で六位に戻りましたが、2020 年度からは十か国に出てきません。データBook のグラフには、2017 年 1 月にミャンマーで中古車の右ハンドルの規制が始まった、という注が付いています。

ロシアは、逆に増えました。2015 年度は 45 千台で九位です。2019 年度に 126 千台で二位、2021 年度に 168 千台で一位、2022 年度は 227 千台でした。2024 年度は 192 千台です。

モンゴルは、2018 年度に 67 千台で初めて十か国に入りました。2023 年度は 95 千台、2024 年度は 108 千台で、三位になっています。

ニュージーランドは、長く二位か三位でした。2015 年度の 118 千台から、2024 年度は 74 千台に減り、五位です。アフリカでは、タンザニアが 44 千台から 85 千台に増え、ケニアは 71 千台から 67 千台で、ほぼ同じです。

一つの国の決まりが変わると、数万台の行き先が変わります。ミャンマーの例は、それをはっきり示しています。

2-3 この統計の読み方

この表を読むときに、気を付けることが三つあります。どれも、データBook の注に書かれています。

一つ目。仕向地と、実際に使われる国は、同じとは限りません。アラブ首長国連邦がずっと一位ですが、そこで使われている台数だとは、この表からは言えません。

二つ目。貿易統計には、20 万円以下の少額の貨物が入っていません。安い車は、この数に出てきません。

三つ目。貿易統計は、あとから直されることがあります。また、この表は、自動車リサイクル促進センターが、輸出の品目から独自の条件で取り出して集計したものです。ほかの団体の数とは合わないことがある、と断ってあります。

返還の台数とも、ぴったりは合いません。2024 年度は、貿易統計の総台数が 1,580 千台、返還を受けた台数が 1,630 千台でした。輸出してから登録が消されるまでに数か月のずれがあること、数える範囲が違うことが、理由として考えられます。

数字は、おおよその大きさと向きを見るために使うのがよいでしょう。どの国が増え、どの国が減ったか。その向きは、どの数え方でも変わりません。

CHAPTER 3輸出と、リサイクルの制度

3-1 輸出のときの手続き

車を輸出するときは、登録の手続きが要ります。国土交通省の案内では、登録を受けている車を輸出する場合は、輸出抹消仮登録です。申請書に、輸出の予定日を書きます。

すでに一時抹消をしている車を輸出する場合は、輸出の届出です。輸出の予定日の 6 か月前から届け出ることができ、輸出予定届出証明書が交付されます。

リサイクル料金の返還は、そのあとです。データBook は、流れを五つの段階で説明しています。持ち主が、国土交通省などで輸出抹消仮登録か輸出の届出をする。税関で輸出の許可を得る。資金管理法人に、受け取った書類を出して返還を申請する。

国土交通省などで輸出の記録がされると、その情報が資金管理法人に送られる。資金管理法人が情報を突き合わせて、持ち主に料金を返す。ここまでが一つの流れです。

返還を請求するのは、おもに中古車の輸出業者です。2024 年度は、申請が 164 万台、返還が 163 万台でした。返される金額は、利息を加えて、申請の手数料を引いた額です。

3-2 請求されなかった料金

輸出したのに、返還が請求されない車もあります。輸出のあと 2 年のあいだ請求がなければ、時効になります。

2024 年度に時効になったのは 31,901 件で、352 百万円でした。前の年度は 29,591 件、318 百万円です。件数も金額も、少しずつ増えています。

このお金は、持ち主には戻りません。特定再資源化預託金等という別の箱に入り、離島で出た使用済みの車を運ぶ費用の支援などに使われます。

輸出が増えると、返還も増え、時効も増えます。リサイクル料金の仕組みは、車が国内で解体されることを前提に作られました。輸出される車が多くなるほど、預けたお金が国内のリサイクルに使われない割合が大きくなります。

審議会の報告書の案は、この返還の制度について、見直しを求める意見があることを書いています。オークションで、料金を自分で負担して入札する解体業者に比べて、返還を受けられる輸出業者のほうが有利になる、という見かたです。案は、制度の全体を見直すときに、あわせて検討するべきだ、としています。

3-3 中古車か、使用済みの車か

輸出には、もう一つ、むずかしい問題があります。その車は、中古車なのか、使用済みの車なのか、という線引きです。

中古車として輸出するなら、輸出の手続きです。使用済みの車なら、国内で、許可を持つ解体業者が解体しなければなりません。どちらなのかで、道がまったく違います。

判断の基準は、国がまとめています。2011 年 2 月の「使用済自動車判別ガイドライン」と、2014 年 1 月の、輸出のときに一時的に部品を外してよい範囲についての知らせです。

報告書の案は、いまの基準では判断がむずかしい場合がある、と書いています。壊れ方が大きいのに中古車として輸出の申告がされた車について、現場ごとの判断に任されている、という状況も示されました。

欧州では、技術的にも経済的にも直せない車を廃車とみなす基準づくりが議論されています。案は、国内の流通の実態と外国の制度の動きを踏まえて、ガイドラインの点検と見直しの検討を 2026 年度から始めるべきだ、としています。輸出が出口の太い柱になったいま、線をどこに引くかは、解体業にとっても大事な話です。

SOURCES出典

  1. 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルデータBook 2024」
    https://www.jarc.or.jp/renewal/wp-content/uploads/2018/10/databook2024.pdf(2026-10-02 確認)
  2. 経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(令和7年9月5日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/060_s02_00.pdf(2026-10-02 確認)
  3. 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認)
  4. 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルに関するデータ/活動実績 等」(2025年10月14日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/061_04_00.pdf(2026-10-02 確認)
  5. 国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト「抹消登録」
    https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/kensatoroku/about/register/erase/index.html(2026-10-02 確認)
  6. 国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト「一時抹消登録後の届出」
    https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/kensatoroku/about/register/deregistration/index.html(2026-10-02 確認)

この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。

CONTRIBUTOR山岸 勇輝Yuuki YAMAGISHI

独立研究者(Independent Researcher)。公式の資料や統計など、一次の資料にあたって書くことを続けている。

yamagishiyuuki.com

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