新車の半分近くがハイブリッド。解体に来るのはまだ少ない。十五年先までの見通しを読む
新車の売り場では、ハイブリッド車が半分に近づいています。けれども、解体の現場に来る車は、まだほとんどがエンジンの車です。車は十七年ほど使われてから解体されるからです。これから、電池を積んだ車が、少しずつ増えてきます。電池はだれが外し、だれが引き取るのか。国の資料と審議会の報告書の案で、いまの仕組みと見通しを確かめます。
CHAPTER 1電動車は、どれだけ来ているか
1-1 新車では、半分近くがハイブリッド車
まず、入口の数を見ます。新車を買うときにリサイクル料金を預けた車のうち、ハイブリッド車が何台あったか。自動車リサイクル促進センターのデータBook に、十年ぶんが載っています。
2015 年度は 22.5 パーセントでした。2020 年度までは、二割台の前半でほとんど動いていません。そこから急に上がり、2024 年度(令和 6 年度)は 46.5 パーセントです。
台数では、2024 年度が 2,126,659 台でした。2015 年度は 1,113,777 台です。九年で、ほぼ二倍になりました。
電気自動車は、まだ少数です。2024 年度に料金を預けた電気自動車は 64,654 台で、全体の 1.413 パーセントでした。2022 年度が 71,783 台、2023 年度が 80,167 台でしたから、2024 年度は前の年より減っています。
この数字には、燃料電池車は入っていません。データBook は、燃料電池の電力でモーターを回す車は集計の対象外、と注を付けています。
1-2 解体に来るのは、まだ 4.60 パーセント
次に、出口の数です。使用済みの車として引き取られた車のうち、ハイブリッド車は何件あったか。
2024 年度は 117,807 件でした。引き取られた車の全体の 4.60 パーセントです。2015 年度は 9,969 件で、0.32 パーセントでした。数は九年で十倍を超えましたが、割合はまだ二十台に一台ほどです。
電気自動車は、もっと少なくなります。2024 年度は 4,618 件で、0.180 パーセントでした。2022 年度は 935 件、2023 年度は 3,173 件です。数は小さいものの、増え方は急です。
新車では半分近く、解体ではまだ 4.60 パーセント。この開きは、時間の差です。解体に来る車の平均の使用年数は 17.0 年です。いま解体されている車は、ハイブリッド車がまだ少なかったころに売られた車です。
裏を返すと、これから先の解体の現場の姿は、もう決まっています。2022 年度からの新車の割合が、十数年おくれて、解体の現場に届きます。
1-3 多くは、電池ごと海を渡っている
もう一つ、見ておく数があります。輸出です。リサイクル料金の返還を受けて輸出された車のうち、ハイブリッド車が何台あったか。
2024 年度は 349,183 台でした。返還を受けた車の 21.4 パーセントです。2015 年度は 93,450 台で、6.3 パーセントでした。
国内で解体されたハイブリッド車が 117,807 件、輸出されたハイブリッド車が 349,183 台。輸出のほうが、およそ三倍あります。使い終わったハイブリッド車の多くは、国内の解体の現場には来ていません。電池を積んだまま、海外へ出ています。
電気自動車も同じ向きです。2024 年度に輸出で返還を受けた電気自動車は 5,765 台でした。国内で引き取られた 4,618 件より多くなっています。
審議会の報告書の案は、この点を、見通しの注に書いています。電池がどれだけ出てくるかは、中古の電気自動車の輸出の台数や、電池のリユースとリサイクルの動きに左右される。だから、推計の値は変わることがある、というものです。
CHAPTER 2電池は、だれが引き取るのか
2-1 外すのは、解体業者
車に積まれた駆動用の電池は、だれが外すのでしょうか。報告書の案は、はっきり書いています。自動車リサイクル法では、使用済みの車の車載用の蓄電池について、解体業者に回収の義務があります。
外したあとの道は、二つです。値段が付いて売れるものは、売られます。報告書の案は、有価で販売できるものは販売される、と書いています。
売れずに、廃棄するしかないものは、別の道に乗ります。日本自動車工業会がつくり、自動車再資源化協力機構が窓口になっている、共同回収の仕組みです。解体業者が外した電池が廃棄物になった場合に、無償で回収して、適正な処理とリサイクルをします。
2024 年度に、この仕組みで回収されたリチウムイオン電池は 13,232 個でした。国内で引き取られたハイブリッド車と電気自動車は、合わせて年に約 12 万台です。積まれている電池には、リチウムイオン電池のほかに、ニッケル・水素電池もあります。13,232 個は、そのうちリチウムイオン電池で、廃棄の道に回ったものの数です。
ここで大事なのは、電池が、法律の三つの品目に入っていないことです。フロン類、エアバッグ類、シュレッダーダストは、メーカーに引き取る義務があり、費用は持ち主が先に預けています。電池には、その仕組みがありません。
2-2 いまの仕組みは、メーカーの自主的な取り組み
共同回収の仕組みは、法律で決められたものではありません。メーカーが自主的に行っているものです。報告書の案は、電動車が出始めた段階の安全網として、一定の効きめを上げている、と評価しています。
始まったのは 2018 年度です。はじめから、事故車や水没車の、傷んだ電池の回収も行っています。解体業者が、積まれている電池の扱いについて、メーカーに相談できる仕組みもあります。発火なども考えに入れた、異常のある電池の対応の手引きや動画も作られています。
費用は、加入しているメーカーが、それぞれ自分で負担しています。回収とリサイクルの実績に応じて、運ぶ費用や処理の費用を払う形です。
案は、ここに三つの心配を挙げています。一つ目は、電池の量が増えたときに、退会するメーカーが出るおそれ。二つ目は、国内の市場から撤退するメーカーが出たときに、その車の電池の処理の費用が確保されないおそれです。
三つ目は、解体業者に関わります。この仕組みに入っておらず、自分でも回収しないメーカーの車の場合です。案は、解体業者に高額な費用の負担が生じるおそれがある、と書いています。傷んだ電池を外す負担が大きくなって、不法投棄につながるおそれにも触れています。
2-3 燃える危険と、値打ちの変わる電池
電池には、ほかの部品にない危険があります。報告書の案は、車載用の蓄電池には発火や発煙の危険が内在している、と書いています。回収、保管、運搬、処理のそれぞれの段階で、これまでの部品とは違う安全の管理を強めることが求められる、としています。
値打ちの面でも、変化が起きています。車載用のリチウムイオン電池は、正極にリチウム、ニッケル、コバルトなどを使う型が、世界的な主流です。どれも、重要な鉱物です。取り出せば資源になります。
ところが、案によると、中国では、資源としての値打ちが低い、リン酸鉄を使う型へ主流が移っています。日本でも、この型の電池を積んだ車が増える可能性があります。
そうなると、何が起きるでしょうか。値段が付いて売れる電池が減り、廃棄の道に回る電池が増える。案は、その懸念を書いています。いま「売れるものは売る」で回っている部分が、細くなるかもしれない、ということです。
解体の現場から見ると、電池は、値の付く部品であると同時に、火の出るおそれのある預かり物です。どちらの顔が強くなるかは、電池の型と、引き取る仕組みで決まります。
CHAPTER 3これからの十五年
3-1 2030 年度に約 13 万個、2040 年度に約 40 万個
電池は、これからどれだけ出てくるのでしょうか。報告書の案に、環境省の推計が載っています。
使用済みの電動車から出るリチウムイオン電池は、2030 年度に年に約 13 万個。2040 年度には、年に約 40 万個です。2024 年度に共同回収の仕組みで回収された 13,232 個と比べると、桁が一つ違います。
推計の前提も書かれています。車の使用年数を約 17 年、廃車になる割合を新車の販売台数の 60 パーセントと仮定したものです。輸出や、電池のリユースとリサイクルの動きで、値は変わりうる、という注が付いています。
案は、対応を急ぐ必要があるとしています。廃棄される電池を適正に処理する体制をつくるために、方針と時期を整理する。そのための作業部会を、2026 年度のうちに置くべきだ、という書き方です。
そこで話し合うこととして、案は多くを挙げています。電動車の普及と電池の排出の見通し。リビルトとリサイクルの技術。新しく入ってくるメーカーの動き。共同回収の仕組みが続けられるか。傷んだ電池の安全。国内の産業への影響。答えは、まだ出ていません。
3-2 情報は、先に届くようになった
仕組みの議論より先に、動いたものがあります。情報です。
2026 年 1 月、作り直された自動車リサイクルの情報システムが動き始めました。報告書の案によると、解体業者と破砕業者に向けて、車載用の蓄電池の装備の情報と、解体しやすくするための情報が、車台番号ごとに出されるようになりました。
解体の現場にとっては、車が来た時点で、どこに、どんな電池が、いくつ積まれているかが分かる、ということです。自動車リサイクル促進センターの資料には、設計中の画面の見本として、一台の車に、駆動用のほかにも複数の電池が載っている例が示されています。電池の位置などの手引きも出す、と書かれています。
センターは、これを、解体の現場などの要望に応えたもの、と説明しています。メーカーの協力を得て、車載の電池や燃料などの装備の情報を、新しく出すことにしたものです。
記録の面でも変わりました。リチウムイオン電池を積んだ車について、料金の預託、引取り、輸出の流れと、外した電池の動きを追えるデータが、システムの中に蓄えられます。案は、電池に関わる課題を見つけることにも使える可能性がある、と書いています。
3-3 磁石、冷媒、海外の規則
変わるのは、電池だけではありません。報告書の案は、ほかの部品にも触れています。
一つは、モーターの磁石です。電動車の駆動用のモーターの永久磁石には、希少なレアアースが含まれています。案は、いまは使用済みの車からの回収の量が限られている、と書いています。回収と選別の技術、磁石からレアアースを分けて精製する技術の開発が重要だ、としています。
もう一つは、エアコンの冷媒です。温暖化への影響がきわめて小さい新しい冷媒が広がっています。HFO-1234yf という名前です。この冷媒はフロン類にあたらないので、自動車リサイクル法の回収と破壊の義務の対象から外れます。この冷媒を積んだ車は、2015 年度の 2,553 台から、2024 年度は 3,832,353 台になりました。
海外の決まりも動いています。欧州のバッテリー規則では、2031 年から、電池に再生材を一定の割合で使うことが求められます。中国では、2026 年 4 月に、電池メーカーと自動車メーカーに使用済みの電池の回収の責任を負わせる決まりが施行されました。
車の中身が変われば、解体の仕事も変わります。外すものが変わり、危険が変わり、値の付くものが変わる。報告書の案は、制度の転換点に関わる論点が増えている、と書いています。解体の現場に電動車が本格的に届くまでの十数年が、その準備の時間です。
SOURCES出典
- 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルデータBook 2024」
https://www.jarc.or.jp/renewal/wp-content/uploads/2018/10/databook2024.pdf(2026-10-02 確認) - 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認) - 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルに関するデータ/活動実績 等」(2025年10月14日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/061_04_00.pdf(2026-10-02 確認) - 経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(令和7年9月5日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/060_s02_00.pdf(2026-10-02 確認)
この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。