定義、保証の基準、在庫の共有、CO₂ の数え方。業界団体と国の資料で読む
使い終わった車から外した部品を、別の車の修理に使う。解体業のいちばん古い仕事の一つです。この三十年で、業界は保証の基準をそろえ、在庫を全国でつなぎ、環境への効きめを数字にしようとしてきました。一方で、研究は、いつも得とは限らないとも書いています。業界団体と国の資料に書かれていることを、順に確かめます。
CHAPTER 1部品を取るという仕事
1-1 リユース部品と、リビルト部品
車から外して、もう一度使う部品には、二つの種類があります。日本自動車リサイクル部品協議会は、二つをこう説明しています。
一つは、リユース部品です。中古部品とも呼ばれます。使用済みの車から使える部品を取り外し、分解などの手は加えずに、目で見て、車に付けた状態で、あるいはテスターで点検する。清掃をして、商品にしたものです。
もう一つは、リビルト部品です。再生部品とも呼ばれます。取り外した部品や、修理で交換された部品をもとにする。摩耗したり劣化したりした構成部品を新品と替え、組み立て直して、テスターで品質を確かめたものです。
協議会は、この二つを合わせて「リサイクル部品」と呼んでいます。ここで言うリサイクルは、溶かして材料に戻すことではありません。部品の形のまま、もう一度使うことです。
国の統計の分類にも、この仕事の箱があります。「自動車中古部品卸売業」です。事例の欄には、部品取りを主とする自動車解体業が挙がっています。部品を取って売ることは、統計の上では卸売の仕事として数えられています。
1-2 リサイクルより先に、リユース
法律は、リユースをどう位置づけているのでしょうか。審議会の報告書の案は、循環型社会形成推進基本法の順番を引いています。発生を抑える、再使用する、再生利用する、熱を回収する、埋め立てる。この順です。
再使用がリユース、再生利用がリサイクルにあたります。案は、車についても、リサイクルに先立ってリユースを進める考え方が基本になる、と書いています。
自動車リサイクル法も、解体業者に回収を求めています。解体業者が守る基準の概要には、有用な部品や材料を、技術的かつ経済的に可能な範囲で回収すること、とあります。
そのための決まりもあります。使用済みの車から部品を取るには、解体業の許可が要ります。国の Q&A は、部品取りを含めて解体にあたる、と説明しています。ただし、持ち主に頼まれてカーステレオやカーナビなどの付属品を外すことは、業として解体をしているとは解釈されない、とも書かれています。
買う側の法律もあります。協議会によると、リサイクル部品は、グリーン購入法の指定品目になっています。環境への負荷が小さい製品を優先して買おうという法律で、2001 年 4 月に施行されました。国の機関には、取り組むことが義務づけられています。
1-3 法律ができる前から、部品は使われていた
部品の再使用は、自動車リサイクル法が作ったものではありません。もっと前からありました。
2002 年に国がまとめた資料に、当時の車の流れの図があります。使用済みの車の重さのうち、部品として再使用されるものは 20 から 30 パーセント、と書かれています。法律ができる前から、車の重さの二割から三割は、部品として次の車に渡っていたことになります。
部品ができるまでの手順は、協議会の説明に並んでいます。車が入庫する。タイヤ、バッテリー、廃油や廃液を抜く。使える部品かどうかを、技術者が判断する。フロン類を回収する。エアバッグを回収する。
そのあとで、部品を一つずつ外します。エンジンなどの主な機能部品は、車に付けた状態でのテストのほか、必要に応じてテスターなどで点検します。安全性と品質を確かめたら、包んで保管し、注文が来たら、状態と車種をもう一度確かめて送ります。
協議会は、国産車と輸入車を問わず、市場に多く売られている車種の大半を網羅している、と書いています。部品を取る仕事は、外して並べるだけではなく、点検と保管と発送までを含む仕事です。
CHAPTER 2信頼をつくる
2-1 鉄の相場に振り回されないために
日本自動車リサイクル部品協議会は、1995 年 11 月に、10 団体 344 社で発足しました。はじめの名前は、日本自動車リサイクル部品販売団体協議会です。
なぜ作られたのか。協議会は、背景を正直に書いています。当時の解体業者は、鉄スクラップの市況の変動に振り回されていた。市況が悪くなると、中古部品の販売に力を入れる。そういう不安定な経営の形への反省があった、というものです。
部品の販売を安定させるには、商品が信頼されなければなりません。協議会は、そのための取り組みが必要だという業界の情勢があった、と続けています。
整備工場の求めに応えるために、まず進んだのが、在庫の共有です。一つの事業者が持っていない部品を、同じネットワークのほかの事業者から出す。それにともなって、商品の保証という制度も取り入れられました。
- 1995日本自動車リサイクル部品販売団体協議会が、10 団体 344 社で発足する
- 2001グリーン購入法が施行される
- 2003協議会が、早稲田大学と、部品の利用による CO₂ の低減を数字にする共同研究を始める
- 2005自動車リサイクル法が施行される
- 2007協議会が、リサイクル部品の利用による CO₂ の削減効果を発表する
- 2010協議会が一般社団法人になる
- 2011協議会が、品質と保証の基準の共通化を発表する
- 2013NGP が、富山県立大学、明治大学と共同研究を始める
- 2025団体をまたいで在庫をつなぐ ARPN が始まる
2-2 保証の基準を、そろえる
保証の中身は、はじめはネットワークごとに違いました。協議会は、1998 年から共通化を検討したが、さまざまな事情で実現に至らなかった、と書いています。
動いたきっかけは、国の審議会です。2010 年 1 月、自動車リサイクル法の施行から五年の見直しの中で、リユース部品の利用の促進が課題になりました。報告書は、ネットワークのあいだで品質と保証の基準を共通にすることが、利用を進める大きな要素になる、と指摘しました。
協議会は、2011 年 4 月に、共通の基準を発表しました。保証の基準は、すべてのリユース部品が対象です。
| 部品 | 保証の期間 |
|---|---|
| 主要機能部品(エンジン、ミッション) | 6 か月。ただし 5,000 km を超えた場合を除く |
| 準主要機能部品(コンプレッサー、セルモーター、オルタネーターなど 7 品目) | 3 か月。ただし 3,000 km を超えた場合を除く |
| そのほかのエンジン関連、トランスミッション関連、足回り、電装の部品 | 1 か月。ただし 1,000 km 以内 |
| 外装部品、内装部品 | 現品を確かめる期間として 1 週間 |
これは、協議会に加盟する団体のあいだの、共通の基準です。それぞれの事業者や、売り方ごとの条件は、これと同じとは限りません。部品を買うときは、売り手の条件を確かめてください。
協議会は、この基準はまだ完成されたものではない、とも書いています。エンジンやミッションなど九つの品目については、品質の見極め方の基準もそろえました。それ以外の部品の基準と、車の電子化にともなうリユース部品のあり方は、引き続き検討するとしています。
2-3 在庫を、全国でつなぐ
在庫の共有は、団体の中から、団体のあいだへ広がっています。
団体の中の例が、NGP です。NGP日本自動車リサイクル事業協同組合は、組合員の 160 の拠点のリユース部品を、登録し、検索し、注文できるシステムを運営しています。外装と内装、機能部品のほぼすべてにあたる 322 の品目を扱っている、と書いています。
団体のあいだの例が、ARPN です。オールリサイクルパーツネットワークの略で、2025 年 2 月に始まりました。審議会の報告書の案によると、12 団体、約 500 社の在庫の情報が共有されています。団体ごとに別々だったシステムを、つなぐ仕組みを介して結んだものです。
案は、効きめを二つ挙げています。システムをまたいで、リユース部品とリビルト部品の取引ができること。買う人に近い事業者から出荷できるので、送料と CO₂ の排出を減らせること。
協議会は、会員の市場の規模の調査も続けています。2026 年 5 月の十二回目の調査は、427 社を対象に行い、254 社から回答がありました。回答の割合は 59 パーセントです。結果は、協議会のホームページで公表されています。
CHAPTER 3CO₂ を数える
3-1 新品を作るときとの、差を数える
リユース部品は環境によい、と言われます。どれだけよいのかを、数字にする研究が続いています。
早かったのは協議会です。2003 年に早稲田大学と共同研究を始め、2007 年 5 月に、結果をデータベースにして発表しました。「グリーンポイントシステム」と名づけられています。
NGP は、2013 年 5 月に、富山県立大学、明治大学と研究会を立ち上げました。2016 年 4 月に、それまでの成果を公表しています。2024 年 2 月までに、109 回の勉強会と 20 回の工場の調査を行った、と書かれています。
数え方の考え方は、どちらも同じです。NGP の説明では、新品の部品を作るときに出る CO₂ と、リユース部品を作るときに出る CO₂ の差を、削減の数値とします。リユース部品を作るとは、外して、洗って、点検することです。
使われているのは、LCA という手法です。原材料の調達から、生産、流通、使用、廃棄までの全体で、環境への負荷を数える方法です。NGP は、CO₂ だけでなく、五つの温室効果ガスを CO₂ に換算した数値を使っている、と書いています。
NGP は、この数値を、見積書と請求書に部品ごとに書いています。買う側が、自分の修理でどれだけ減らしたかを見られるようにするためです。
3-2 その数字は、どこまで確かか
では、その数字はどのくらい確かなのでしょうか。NGP は、自分でこの問いを立てて、答えています。おおよその予測値であることを理解してほしい、という答えです。
理由も書かれています。部品を一つずつ分解して調べれば、削減の数値は出せる。しかし、すべての車種の、すべての部品を分解して調べることは、現実的ではない。そこで、車検証の情報などから、部品ごとにいちばん適切な値を選んで算出している、というものです。
対応している部品の数も出ています。90 部品、左右を合わせると 115 部品です。2017 年 8 月の時点で、NGP の売上の上位、約 91.4 パーセントの部品にあたります。
もとになった調査の規模も分かります。2016 年の国際会議での発表は、39 台、27 車種の、50 部品を調べたものでした。
団体は、月ごとの合計も公表しています。NGP のサイトには、2026 年 8 月のリサイクル部品の利用による削減量として 1,710 トンが出ています。協議会のサイトには、2026 年 5 月ぶんとして 13,729 トン、1 月からの累計として 61,575 トンが出ています。二つは、数える範囲も方法も違うので、並べて比べることはできません。
なお、新品に比べて何パーセント減る、という一つの数字は、ここで確かめた資料には出てきません。数値は、部品ごとに、車の種類に合わせて出されています。
3-3 いつも得、とは限らない
研究は、都合のよいことだけを書いてはいません。2018 年に国際会議で発表された研究の概要は、こう書いています。
リユース部品は、一般に、新品に比べて安く、環境への負荷も小さい。しかし、使用価値と寿命は、新品に比べて劣る。だから、車を使う予定の期間によっては、リユース部品を使うことが、使う人にとって必ずしも有益ではない。
この研究は、使用価値、環境負荷、費用の三つから、使う人に合った直し方を示すことを目的にしていました。翌年の研究は、新品、リビルト部品、リユース部品を、同じ指標で比べる方法を、スターターモーターを例に示しています。
つまり、問いは「リユース部品は良いか悪いか」ではありません。「この車を、あと何年使うのか」です。長く乗る車と、あと少しだけ乗る車とでは、合う部品が違ってきます。
国の方向は、流通を進めることです。報告書の案は、リユース部品の流通が進めば、車一台の実質的な値打ちが上がり、解体業者の収益の向上につながる、と書いています。プラスチックなどの素材が国内で回ることにも役立つ、としています。
そのために必要なこととして、案が挙げているのは情報です。使う人が、品質などの情報を手に入れやすい環境を整えること。解体しやすい設計で、回収できる部品を増やすこと。メーカー、整備、保険、持ち主が連携して、実態の把握と促進の策を引き続き検討するべきだ、と結んでいます。
SOURCES出典
- 一般社団法人 日本自動車リサイクル部品協議会「リサイクル部品とは」
https://www.japra.gr.jp/recycling(2026-10-02 確認) - 一般社団法人 日本自動車リサイクル部品協議会「品質保証」
https://www.japra.gr.jp/quality(2026-10-02 確認) - 一般社団法人 日本自動車リサイクル部品協議会「沿革」
https://www.japra.gr.jp/summary/history(2026-10-02 確認) - 一般社団法人 日本自動車リサイクル部品協議会「日本自動車リサイクル部品協議会とは」
https://www.japra.gr.jp/summary/description(2026-10-02 確認) - 一般社団法人 日本自動車リサイクル部品協議会 トップページ
https://www.japra.gr.jp/(2026-10-02 確認) - NGP日本自動車リサイクル事業協同組合 プレスリリース「NIKKEI脱炭素アワード2023 にて奨励賞を受賞」
https://www.ngp.gr.jp/press/p_info/71.php(2026-10-02 確認) - NGPエコプロジェクト トップページ
https://www.nepp.jp/(2026-10-02 確認) - NGPエコプロジェクト「よくある質問」
https://www.nepp.jp/faq/(2026-10-02 確認) - NGPエコプロジェクト「研究成果の発表」
https://www.nepp.jp/research/results.php(2026-10-02 確認) - 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認) - 経済産業省・環境省・国土交通省「使用済自動車の再資源化等に関する法律の概要(自動車リサイクル法)」(平成14年7月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/pdf/003_11_01.pdf(2026-10-02 確認) - 経済産業省・環境省ほか「自動車リサイクル法に関する主なQ&A 解体業者編」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/automobile_recycle/other/pdf/explanation/kaitaiQA.pdf(2026-10-02 確認) - 政府統計の総合窓口 e-Stat「日本標準産業分類(平成25年10月改定)5423 自動車中古部品卸売業」
https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/10/03/5423(2026-10-02 確認)
この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。