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シュレッダーダストは、どこへ行くのか

一台から 192.2 kg。再資源化率 96.7 パーセントの中身と、埋め立ての減り方

一台から 192.2 kg。再資源化率 96.7 パーセントの中身と、埋め立ての減り方

車を解体して、鉄や部品を取ったあとに、最後に残るものがあります。プラスチックやガラス、ゴムが混ざった、シュレッダーダストです。自動車リサイクル法は、これの処理に困ったことから生まれました。いま、その再資源化率は 96.7 パーセントです。この数字は何を数えているのか。残りはどこへ行くのか。国の資料で中身を確かめます。

CHAPTER 1最後に残るもの

1-1 シュレッダーダストとは何か

車は、段階を追って小さくなっていきます。まず解体業者が、使える部品や材料を取り外します。残った車体が、破砕業者に渡ります。破砕業者は、車体を砕いて、鉄と非鉄金属を選び分けます。

それでも残るものがあります。環境省は、こう説明しています。比重の大きい鉄スクラップと非鉄金属スクラップを選別して回収したあとの、プラスチック、ガラス、ゴムなど、比重の小さい物からなる廃棄物。これがシュレッダーダストです。

英語の頭文字を取って、ASR とも呼ばれます。Automobile Shredder Residue の略です。国の資料では、こちらの呼び名がよく使われます。

金属として取り出せないものが、砕かれて混ざった状態です。混ざっているので、材料として使い直すのがむずかしいものです。

自動車リサイクル法は、これをメーカーと輸入業者に引き取らせることにしました。破砕業者は、出てきたシュレッダーダストを、メーカーなどが指定した引取場所に引き渡します。

1-2 一台から、192.2 kg

量を見ます。2024 年度(令和 6 年度)にメーカーなどが引き取ったシュレッダーダストは、423,949 トンでした。車の台数にすると 2,205,461 台ぶんです。

一台あたりでは 192.2 kg になります。2005 年度は 176.9 kg でした。2021 年度が 186.8 kg、2022 年度が 189.3 kg、2023 年度が 189.6 kg です。少しずつ増えています。

全体の量は、車の台数と一緒に減っています。2021 年度は 522,062 トンでした。2022 年度は 456,890 トン、2023 年度は 454,396 トンです。三年で、十万トン近く減りました。

どこで出ているかも分かります。次の図は、破砕業者のある場所で分けた、2024 年度の引取りの重さです。

FIGURE地域ごとのシュレッダーダストの引取重量(トン・2024 年度)。破砕業者の所在地で分けたもの
関東・甲信越116,669
中部76,694
九州・沖縄58,225
近畿53,273
東北52,412
中国・四国42,222
北海道24,455

関東・甲信越が 116,669 トンで、全体の四分の一を超えます。次が中部の 76,694 トンです。車が多く解体され、破砕される場所で、多く出ています。

引き取るときの重さには、決まりがあります。メーカーは車ごとに、引き取る重さの上限を出しています。実際に量った重さがそれを超えると、引取りを断られる対象になります。2024 年度は、実際の重さの合計が、上限の合計の 99.0 パーセントでした。

1-3 法律ができる前は、埋めていた

法律ができる前、シュレッダーダストは、おもに埋め立てられていました。2002 年に国がまとめた資料は、車の重さの 20 から 25 パーセントがシュレッダーダストになり、埋め立てや焼却に回る、と図に書いています。

埋め立てる場所が足りなくなると、処分の費用が上がりました。環境省は、産業廃棄物の最終処分場が逼迫して、シュレッダーダストを減らす必要が高まった、と説明しています。

法律が動き出した最初の年度の数が残っています。2005 年度に、埋立施設へ直接入れられたシュレッダーダストは 105,001 トンでした。リサイクル施設から出た残りかすなどを合わせた最終処分量は、155,815 トンです。

引き取った車一台あたりにすると、64 kg でした。一台から出る 176.9 kg のうち、三分の一を超える量が、最後は埋め立てに回っていたことになります。

ここが出発点です。次の章では、この数字が二十年でどう変わったかを見ます。

CHAPTER 296.7 パーセントの中身

2-1 基準は 30、50、70 と上がった

法律は、メーカーに、シュレッダーダストの再資源化率の基準を課しています。基準は三段階で上がりました。2005 年度からは 30 パーセント、2010 年度からは 50 パーセント、2015 年度からは 70 パーセントです。

実績は、基準よりずっと上を行きました。全体の平均で、2005 年度が 61.8 パーセントです。審議会の報告書の案によると、70 パーセントという目標は、2008 年度に前倒しで達成されました。

TABLEシュレッダーダストの再資源化率(すべてのメーカーなどの平均)
年度再資源化率そのときの基準
200561.8 パーセント30 パーセント
202196.5 パーセント70 パーセント
202296.8 パーセント70 パーセント
202396.6 パーセント70 パーセント
202496.7 パーセント70 パーセント

2024 年度は 96.7 パーセントでした。この四年は、96 パーセント台の後半で動いていません。報告書の案は、近年は 95 パーセント以上で推移している、とまとめています。

ここで、数字の読み方を確かめておきます。この 96.7 パーセントは、車全体のリサイクル率ではありません。最後に残ったシュレッダーダストのうち、どれだけが再資源化されたか、という率です。車全体で見れば、その前に鉄や部品が取り出されています。

2-2 三分の二は、熱として使われている

では、再資源化とは何をすることでしょうか。法律の定義は二つです。一つは、原材料や部品として使える状態にすること。もう一つは、熱を得ることに使える状態にすることです。

つまり、燃やして熱を取ることも、再資源化に入ります。報告書の案は、法律には量の基準だけがあり、熱回収も再資源化率に数えることを認めている、と書いています。

内訳は、国の資料に出ています。

FIGURE引き取られたシュレッダーダストの使われ方(パーセント・2024 年度)
熱回収67.8
マテリアルリサイクル28.8

2024 年度は、熱回収が 67.8 パーセント、材料として使うマテリアルリサイクルが 28.8 パーセントでした。2021 年度は 67.4 パーセントと 29.0 パーセントです。割合は、ほとんど変わっていません。

報告書の案は、もう一歩踏み込んでいます。マテリアルリサイクルは約 30 パーセントで、そのうちプラスチックのマテリアルリサイクルは約 1.5 パーセントだ、というものです。プラスチックがプラスチックとして使い直されている割合は、まだ小さいのです。

熱回収が多い理由も書かれています。シュレッダーダストは、発熱量があり、有害な物質を適正に処理する必要もあるので、熱回収の施設での処理が広く行われている。施設の側も、安定してシュレッダーダストが入ってくることで、操業を続けられる、という説明です。

2-3 埋め立ては、一台あたり 6 kg になった

結果として、埋め立ては大きく減りました。引き取った車一台あたりの最終処分量を、年度ごとに並べます。

FIGURE車一台あたりの最終処分量(kg)。2006 年度から 2020 年度は、確かめた資料に載っていない
642005
…
72021
62022
72023
62024

2005 年度は 64 kg でした。2024 年度は 6 kg です。十分の一より少なくなりました。

総量でも同じです。最終処分量は、2005 年度の 155,815 トンから、2024 年度は 14,223 トンになりました。いま埋め立てに回っているのは、リサイクル施設から出る残りかすだけです。

埋立施設や焼却施設へ直接入れられるシュレッダーダストは、いまはゼロです。報告書の案によると、2014 年度からゼロが続いていましたが、2018 年度に五年ぶりに出ました。海外の雑品スクラップの受け入れ停止や、再資源化の施設のトラブルが影響した、と書かれています。2021 年度からは、またゼロに戻っています。

埋め立てる場所が足りない、という法律の出発点の問題は、数字の上では片づいています。残っているのは、熱として使っているものを、どれだけ材料として使い直せるか、という次の問題です。

CHAPTER 3だれが処理し、これからどうなるか

3-1 二つのチームが、競って処理している

シュレッダーダストを引き取るのは、メーカー一社ずつではありません。メーカーと輸入業者は、二つのチームに分かれています。TH チームと ART です。

TH チームには、トヨタ自動車、本田技研工業、ダイハツ工業、日野自動車などが入っています。ART には、日産自動車、スズキ、マツダ、三菱自動車工業、SUBARU、いすゞ自動車などが入っています。輸入業者も、どちらかに入っています。

国の資料は、チーム制による競争の結果、再資源化率が高い水準で推移している、と書いています。2005 年度は、TH チームが 57.2 パーセント、ART が 66.3 パーセントでした。2024 年度は、96.5 パーセントと 96.8 パーセントです。

使っている施設は重なっています。2024 年度の再資源化施設は、TH チームが 53、ART が 59 でした。このうちリサイクル施設はどちらも 47 で、両方のチームが使っている施設が 42 あります。

報告書の案は、この二チームの形を見直す話を取り上げています。はじめは競争が率の向上と料金の低減に役立ったが、近年は競争の余地が小さくなり、契約の重複や事務の負担が目立ってきた、というものです。一つにまとめた場合の良い点と悪い点を比べる検討を、2026 年度のうちに始めるべきだ、としています。

3-2 車体を丸ごと、鉄にする道

シュレッダーダストを出さない道もあります。解体のあとの車体を、破砕せずにプレスして、そのまま電炉や転炉に入れる方法です。車体の全部が鉄鋼の原料になります。これを全部利用と言います。

このうち、メーカーが解体業者や破砕業者に細かい解体を委託し、国の認定を受けて行うものを、全部再資源化と言います。銅を含む部品などを、先にていねいに取り外しておく必要があります。

国の Q&A によると、認定を受けたメーカーにはシュレッダーダストの料金が払い渡されます。メーカーは、それをもとに、解体や破砕の業者に、作業に見合う委託の費用を払います。

2024 年度に、認定を受けた全部利用に回ったのは 139,738 台でした。シュレッダーダストに換算すると 25,354 トンにあたります。全体に占める割合は、重さで 5.6 パーセントです。

2005 年度は 307,167 台で、割合は 11.0 パーセントでした。報告書の案は、粗鋼の生産が減った影響などで下がり、近年は横ばいだ、と書いています。

3-3 ダストになる前に、取り出す

これからの方向は、はっきりしています。混ざってしまう前に、取り出すことです。

2026 年 4 月に、資源回収インセンティブ制度が始まりました。解体や破砕の段階で、樹脂やガラスを資源として回収する。すると、シュレッダーダストの量が減り、その処理の費用も減ります。減ったぶんのリサイクル料金をもとにして、回収した事業者にお金を払う仕組みです。

参加するには、解体業者、破砕業者、原材料のメーカーなどが組をつくって、チームと契約します。報告書の案によると、制度の特設サイトに登録した事業者は、2026 年 5 月末の時点で全国 560 でした。一方、アンケートでは、参加の意向を持つ企業は 4 割ほどにとどまっています。

背景には、再生プラスチックの需要があります。欧州で議論されている規則の案は、新しい車に使うプラスチックのうち、再生プラスチックを 15 パーセント以上、のちに 25 パーセント以上にすることを求める内容です。

日本の中の見通しも、足りていません。国の推計では、車に向けた再生プラスチックの供給の目標が年に 20 万トンであるのに対し、ポリプロピレンの供給できる量は 6.9 万トンから 9.5 万トンです。シュレッダーダストになる前に樹脂を取り出すことは、解体の現場の、これからの仕事の一つになります。

SOURCES出典

  1. 経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(令和7年9月5日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/060_s02_00.pdf(2026-10-02 確認)
  2. 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認)
  3. 環境省「自動車リサイクルの概要」
    https://www.env.go.jp/recycle/car/gaiyo.html(2026-10-02 確認)
  4. 経済産業省・環境省・国土交通省「使用済自動車の再資源化等に関する法律の概要(自動車リサイクル法)」(平成14年7月)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/pdf/003_11_01.pdf(2026-10-02 確認)
  5. 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルデータBook 2024」
    https://www.jarc.or.jp/renewal/wp-content/uploads/2018/10/databook2024.pdf(2026-10-02 確認)
  6. 経済産業省・環境省ほか「自動車リサイクル法に関する主なQ&A 解体業者編」
    https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/automobile_recycle/other/pdf/explanation/kaitaiQA.pdf(2026-10-02 確認)

この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。

CONTRIBUTOR山岸 勇輝Yuuki YAMAGISHI

独立研究者(Independent Researcher)。公式の資料や統計など、一次の資料にあたって書くことを続けている。

yamagishiyuuki.com

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