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車のプラスチックは、もう一度、車になれるか

残りかすの中の十七万トン。年に二十万トンという目標と、解体の現場に回ってきた役目

残りかすの中の十七万トン。年に二十万トンという目標と、解体の現場に回ってきた役目

車には、一台あたり百三十キロほどのプラスチックが使われています。その多くは、解体のあと、砕かれた残りかすの中に混ざり、燃やされて熱になっています。これを、もう一度、車の材料に戻そうという動きが始まりました。欧州の新しい規則が、背中を押しています。国の行動計画と審議会の資料で、目標と、足りない量と、解体の現場の役目を読みます。

CHAPTER 1車のプラスチックは、いまどこへ行っているか

1-1 一台に、約 130 kg

車に使われているプラスチックの量を、環境省の行動計画は、計算の前提として書いています。車一台あたり、約 130 kg です。

国内の乗用車の生産は、2023 年の実績で、年に 775 万台でした。一台に約 130 kg とすると、毎年 100 万トンのプラスチックが、車に使われていることになります。

行動計画の図では、使用済みの車のプラスチックの流れは、二つに分かれています。バンパーなどは、解体の段階で外されます。それ以外は、破砕のあと、金属のほかのものと一緒に、残りかすになります。

残りかすになったプラスチックの行き先は、図では熱回収です。再生材として車の部品に戻る流れは、まだ確立していない流れとして、点線で描かれています。

行動計画は、課題を図にしています。使用済みの車の解体の段階では、プラスチックを回収する動機が足りない。残りかすの段階では、プラスチックが混ざって汚れていて、リサイクルに向かない。この二つが、最初に挙げられています。

1-2 残りかすの中の、十七万トン

解体と破砕のあとに残るシュレッダーダストは、2024 年度に 423,949 トンでした。審議会の資料は、その中身を書いています。年に 42 万トンほどのうち、17 万トンほどは、硬いプラスチックが含まれていると見込まれる。

このプラスチックは、どう使われているのでしょうか。2024 年度の、シュレッダーダストの使われ方の内訳です。

FIGUREシュレッダーダストの使われ方(パーセント・2024 年度)
熱回収67.8
金属類として回収14.1
セメント類11.1
最終処分3.4
その他1.6
プラスチックとして回収1.5
土砂・ガラス0.5

三分の二は、熱回収です。燃やして、熱として使われています。プラスチックとして回収されているのは、1.5 パーセントでした。

資料は、別の数え方もしています。残りかすに含まれる硬いプラスチックだけを分母にすると、材料として使い直されているのは約 4 パーセント、約 6,400 トンです。17 万トンほどあるうちの、6,400 トンです。

資料は、プラスチックの材料としてのリサイクルは、現時点ではほとんど行われていない、と書いています。そして、技術の開発が進んでいる、と続けています。

1-3 「車全体では 87 パーセント」という見かた

ここで、数字の見かたを一つ確かめます。熱回収が三分の二、と聞くと、車の大半が燃やされているように聞こえます。そうではありません。

審議会のヒアリングで、こういう意見が出ています。使用済みの車は、すでに約 82 パーセントが、解体と破砕の段階で、リユースされるか、材料としてリサイクルされている。残りの 18 パーセントが、シュレッダーダストです。

その 18 パーセントのうち 30 パーセント、つまり全体の 5 パーセントが、材料としてリサイクルされている。合わせると 87 パーセントで、欧州の指令の 85 パーセントとほぼ同じ水準以上だ。熱回収が 70 パーセントと言われるのも、車全体から見れば 13 パーセントだ、という意見です。

これは、ヒアリングで出た意見として資料に載っているものです。けれども、数字の関係は分かりやすくなります。熱回収の割合は、残りかすの中での割合です。車全体の中での割合ではありません。

熱回収を再資源化に数えるかどうかは、法律によって違います。資料によると、自動車リサイクル法は数えます。法律を作るとき、残りかすを材料として使い直すことはもともと容易ではなく、埋め立てる場所が足りない問題もあったので、熱回収を含めることが欠かせないとされた、と説明されています。

CHAPTER 2目標と、足りない量

2-1 年に 20 万トン、という目標

2024 年 11 月、環境省は、経済産業省と一緒に、産官学のコンソーシアムを立ち上げました。車に向けた再生プラスチックの市場をつくるためのものです。自動車、部品、解体、破砕、鉄リサイクル、化学、プラスチックの団体が入っています。

2025 年 3 月に、行動計画がまとまりました。その中に、供給量の目標があります。

FIGURE車に向けた再生プラスチックなどの供給量の目標(万トン/年)
2.52031
12.42035
15.72036
19.02040
20.02041

2031 年に、年 2.5 万トン。そこから毎年積み上げて、2035 年に 12.4 万トン、2040 年に 19.0 万トン。2041 年からは、年 20.0 万トンです。

目標の考え方は、三つの段になっています。2031 年から 2035 年は、新しい型の車に使うプラスチックの 15 パーセント以上を、再生プラスチックにする。2036 年から 2040 年は、20 パーセント以上。2041 年からは、国内で生産されるすべての乗用車で、20 パーセント以上です。

新しい型の車から始めるのは、理由があります。計画は、平均 6 年で型が全面的に変わると置いて、毎年 130 万台の新しい型の車が出る、と計算しています。その車に使うプラスチックが、16.5 万トンです。

2-2 見込みは、目標の半分に届かない

では、それだけの量を出せるのでしょうか。審議会の資料に、試算が載っています。

対象は、ポリプロピレンという種類のプラスチックです。資源回収インセンティブ制度と、プラスチックの新しい法律が広まった将来を置いて、2041 年の時点でどれだけ出せるかを計算しました。

結果は、6.9 万トンから 9.5 万トンでした。目標の 20 万トンの、半分に届きません。資料は、2041 年の時点の供給量は目標に未達だ、と書いています。

しかも、この数には注意書きが付いています。車に使える品質かどうかは、この分析に入っていない。だから、実際に出せる量は、これより少なくなることがある。

反対に、増える見込みも書かれています。この試算に入れていない、工場から出る端材や、ポリプロピレンのほかの樹脂が出てくれば、もっと確保できる可能性がある。資料は、これは今のまま進んだ場合の姿であって、足りないぶんを埋める策を引き続き検討する必要がある、と結んでいます。

2-3 欧州の規則が、背中を押している

なぜ、いま目標が置かれたのでしょうか。行動計画は、背景に欧州の動きを挙げています。

2023 年 7 月、欧州委員会は、車の設計と廃車の管理についての新しい規則の案を出しました。新しい車に使うプラスチックに、再生プラスチックを一定の割合で入れることを求める内容です。

数字は、議論の中で動いています。行動計画がまとまった時点では、はじめの案が 25 パーセント、議会の修正案が 20 パーセントでした。審議会の報告書の案によると、2025 年 12 月に、欧州の三つの機関の協議で、暫定の合意ができました。

その内容は、規則ができてから 6 年後に 15 パーセント以上、10 年後に 25 パーセント以上です。そのうち、使用済みの車から取ったものが、それぞれ 3 パーセント以上、5 パーセント以上でなければなりません。

行動計画は、自分の供給量の目標について、欧州の規則の案にも対応できる数値になっている、と書いています。日本の自動車工業会も、2024 年 9 月に、再生プラスチックなどを使う割合の自主的な目標を公表しました。作る側が、使う量を先に約束する形になってきています。

CHAPTER 3解体の現場に、回ってきた役目

3-1 混ざる前に、外す

足りない量を、どこから出すのか。審議会の資料は、順番を書いています。まず、残りかすになる前の段階で、材料としてのリサイクルを最大にする。

そのための仕組みが、資源回収インセンティブ制度です。2026 年 4 月に始まりました。解体業者や破砕業者が、車からプラスチックやガラスを外して、資源として回収する。そうすると、お金が払われます。

お金の出どころを、行動計画は例で示しています。ふつうは、一台から 180 kg の残りかすが出て、その処理の費用が、リサイクル料金から払われます。解体の段階で 20 kg のプラスチックを外せば、残りかすは 160 kg になります。減った 20 kg ぶんの処理の費用が浮きます。それを、外した事業者に回す、という考え方です。

もとになるのは、持ち主がすでに預けているリサイクル料金の一部です。行動計画の図にも、処理の費用は持ち主の負担、と注が付いています。料金の中で、行き先が変わる仕組みです。

参加するには、組をつくります。解体業者、破砕業者、原材料のメーカーなどがコンソーシアムをつくり、メーカーのチームと契約します。審議会の報告書の案は、これを、国内を中心として資源の循環を行うコンソーシアム、と説明しています。

3-2 参加の壁

制度は始まりましたが、だれもがすぐに参加できるわけではありません。経済産業省のアンケートでは、制度を知っている事業者は多いものの、参加の意向を持つ企業は 4 割ほどにとどまりました。

資料は、壁になっていることを並べています。扱う車が減っていて、プラスチックの部品の買取の値段も安く、事業として成り立つかが見えない。事務の作業や、契約と監査への対応の負担が大きい。設備への投資の負担が大きい。作業をする人が足りない。

ヒアリングでは、もっと具体的な声が出ています。参加の条件として、45 台ぶんの重さのデータを出すことが、中小の事業者には大きな壁だ。メーカーのチームが二つあり、申請に手間がかかる。支払いの方法も二つのチームで違い、分かりにくい。

中小の解体業者が、組のまとめ役になるのはむずかしく、商社のような働きが要る、という声もあります。プラスチックの値段が安いので、市場ができるまでは参加を見送る、という事業者もいます。

国は、設備の補助をしています。環境省は、2025 年に、制度に参加する予定の事業者に向けて、プラスチックを砕く設備の補助を 22 件、採択しました。自動車リサイクル促進センターの特設サイトには、2025 年 9 月 30 日の時点で、462 の関係者が登録しています。解体の事業者が 135、破砕の事業者が 63 です。

3-3 残りかすから、取り出す技術

もう一つの道は、残りかすになってから、取り出すことです。こちらは、技術の話になります。

審議会の資料は、進んだ例を挙げています。残りかすを処理する施設で、細かい選別をする。そのあと、樹脂のリサイクルの会社で、もう一度選別して、材料として整える。そうして、車に使える再生プラスチックを作る技術が、少しずつ実際に使われ始めています。

燃やす施設の側でも、動きがあります。燃やす前の工程で、プラスチックを取り出す設備を入れる。燃やしたあとの灰から、貴金属を取り出す技術を開発する。材料としてのリサイクルと、熱回収を組み合わせた施設へ変わろうとする取り組みです。

二つのチームの数字にも、違いが出ています。2024 年度に、シュレッダーダストからプラスチックとして回収された割合は、TH チームが 1.7 パーセント、ART が 1.2 パーセントでした。契約している施設は、TH チームが 46、ART が 44 で、そのうち 42 が重なっています。

資料は、最後にこうまとめています。残りかすになる前の回収と、残りかすになってからの回収と、熱回収。この三つを、一つながりの仕組みとして考える。解体の現場でプラスチックを外す仕事は、その最初の一歩です。車を鉄と部品に分けてきた仕事に、もう一つ、分けるものが加わりました。

SOURCES出典

  1. 環境省「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン【概要版】」(2025年3月)
    https://www.env.go.jp/content/000302434.pdf(2026-10-02 確認)
  2. 経済産業省・環境省 合同会議資料「自動車リサイクル制度の個別論点の深掘りについて(国内資源循環の推進)」(2026年1月13日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/064_03_00.pdf(2026-10-02 確認)
  3. 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認)
  4. 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルに関するデータ/活動実績 等」(2025年10月14日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/061_04_00.pdf(2026-10-02 確認)

この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。

CONTRIBUTOR山岸 勇輝Yuuki YAMAGISHI

独立研究者(Independent Researcher)。公式の資料や統計など、一次の資料にあたって書くことを続けている。

yamagishiyuuki.com

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