プラチナ、パラジウム、ロジウム。世界の需要の大半が車に向かう金属と、回収という鉱山
車の排気の通り道には、触媒という部品が付いています。その中に、プラチナ、パラジウム、ロジウムという、きわめて希少な金属が使われています。世界で使われるパラジウムの八割、ロジウムの九割は、車の触媒のためのものです。使い終わった車は、この金属の鉱山でもあります。金属資源の公的な機関の資料と、国の審議会の資料で、数字を確かめます。
CHAPTER 1排気の触媒に入っている金属
1-1 白金族という、六つの元素
車の排気をきれいにする触媒には、白金族と呼ばれる金属が使われています。英語の頭文字で、PGM とも書かれます。
白金族は、六つの元素の仲間です。プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム。金属資源の機関である JOGMEC は、この六つは同じ鉱床から出てきて、物理的な性質も化学的な性質も、互いによく似ている、と説明しています。
車に使われるのは、おもに最初の三つです。JOGMEC の資料は、役目の違いを書いています。プラチナは、いまは主にディーゼル車の触媒に使われる。パラジウムは、主にガソリン車の触媒に使われる。
ロジウムは、少し違う働きをします。資料によると、ロジウムは還元の特性に優れ、酸化の特性に優れるプラチナやパラジウムと一緒に、車の排気の三元触媒に欠かせない元素です。
三つとも、熱に強く、酸に侵されにくい金属です。プラチナの融点は 1768 度で、王水のほかには溶けにくい、と資料にあります。資料は、プラチナを、すべての元素の中で、最も高い耐酸性と安定性、高い活性を持つ元素の一つ、と紹介しています。
1-2 どれだけ、希少か
白金族は、地球の上に、ごくわずかしかありません。JOGMEC の資料は、数字で示しています。
プラチナが地殻に含まれる量は、5 ppb ほどです。ppb は十億分の一です。ロジウムは、わずか 0.1 ppb です。
鉱山も、限られています。資料は、鉱山を二つに分けています。白金族を主に掘っていて、含まれる割合が比較的高い南アフリカ、ジンバブエ、米国。銅やニッケルの副産物として掘っているロシア、カナダ。
鉱石に含まれる量も、少しです。南アフリカの鉱山では、プラチナ、パラジウム、ロジウム、金を合わせた品位が、3 から 7 ppm の鉱石を掘っています。ppm は百万分の一です。一トンの鉱石から、数グラムということになります。
2020 年の世界の鉱山からの生産は、プラチナが 152 トン、パラジウムが 192 トン、ロジウムが 18 トンでした。プラチナは南アフリカが 65 パーセント。パラジウムはロシアが 44 パーセント、南アフリカが 31 パーセント。ロジウムは南アフリカが 77 パーセントです。少ない国に、偏っています。
1-3 需要の大半は、車の触媒
この金属は、何に使われているのでしょうか。2020 年の世界の需要の内訳が、資料に載っています。
ロジウムは、需要の 92 パーセントが、車の排気の触媒です。パラジウムは 86 パーセント。プラチナは 32 パーセントで、宝飾の 23 パーセントが続きます。
量で見ると、2020 年に車の触媒に使われたのは、プラチナが 69 トン、パラジウムが 264 トン、ロジウムが 29 トンでした。
パラジウムが多いのには、経緯があります。資料によると、2017 年より前は、パラジウムはプラチナより安い金属でした。車の会社は、費用を下げるために、プラチナからパラジウムへの切り替えを進めました。その結果、パラジウムの車の触媒の需要は、プラチナの 3 倍近くになり、値段も逆転しました。
つまり、この三つの金属は、車と一緒に動いています。車が作られれば要り、車が使い終われば出てきます。
CHAPTER 2回収という、もう一つの鉱山
2-1 世界の供給の、三分の一は回収
鉱山から掘るだけでは、足りません。使い終わった触媒から取り出した金属が、供給の大きな部分を占めています。
| 金属 | 鉱山からの生産 | 触媒などからの回収 |
|---|---|---|
| プラチナ | 152 | 51 |
| パラジウム | 192 | 97 |
| ロジウム | 18 | 10.5 |
2020 年の世界の供給は、プラチナが鉱山から 152 トン、回収から 51 トンでした。パラジウムは、鉱山から 192 トン、回収から 97 トン。ロジウムは、鉱山から 18 トン、回収から 10.5 トンです。
パラジウムとロジウムでは、供給の三分の一あまりが、回収によるものです。資料の注によると、この回収には、触媒のほかに、電気製品や宝飾品からの回収も入っています。
JOGMEC は、原料の説明の中で、こう書いています。二次の原料として、廃車の排気の触媒や、使用済みの基板からのリサイクル品の利用が行われている。
回収の量は、年によって動きます。プラチナの回収は、2019 年が 65 トン、2020 年が 51 トンでした。パラジウムは 106 トンから 97 トンです。鉱山からの生産と同じように、回収も、世界の供給を支える柱の一つになっています。
2-2 日本の中の数字
日本の中では、どうでしょうか。資料に、国内の需給の表があります。
| 金属 | 国内での回収 | 輸入 |
|---|---|---|
| プラチナ | 11.1 | 37.2 |
| パラジウム | 23.8 | 49.1 |
| ロジウム | 1.1 | 6.4 |
2020 年に、国内で回収されたプラチナは 11.1 トン、パラジウムは 23.8 トン、ロジウムは 1.1 トンでした。回収の数字の出所は、触媒資源化協会とあります。
輸入は、プラチナが 37.2 トン、パラジウムが 49.1 トン、ロジウムが 6.4 トンです。資料の表では、国内の供給は、製錬の副産物と、回収と、輸入の三つです。プラチナの製錬の副産物は 1.2 トンで、回収の十分の一ほどでした。
資料は、リサイクル率も出しています。計算のしかたは、使用済みの製品から材料として回収した量を、見かけの消費で割るものです。2020 年は、白金族の全体で 48 パーセントでした。2011 年は 34 パーセントです。
金属ごとでは、2020 年に、プラチナが 88 パーセント、パラジウムが 43 パーセント、ロジウムが 16 パーセントでした。プラチナの率が高いのは、この年、輸入から輸出を引いた量が小さかったためです。年によって、大きく動く数字です。
2-3 解体の現場と、触媒
触媒は、解体の現場で、車から外されます。そのことは、法律ができる前の国の資料にも書かれています。
2002 年の資料は、当時の車の流れを図にしています。その中に、素材としてリサイクルされる部品、という区分があります。車の重さの約 15 パーセントで、例として、エンジン、触媒、非鉄金属、タイヤが挙がっています。
つまり、触媒は、法律ができる前から、素材として回収される部品に数えられていました。自動車リサイクル法がメーカーに引き取らせる三つの品目には、入っていません。
値段は、大きく動きます。資料に、貿易統計から出した、平均の輸入の価格が載っています。単位は、1 トロイオンスあたりのドルです。1 トロイオンスは 31.1035 グラムです。
2016 年は、プラチナの地金が 980 ドル、パラジウムが 603 ドル、ロジウムが 684 ドルでした。2020 年は、プラチナが 867 ドル、パラジウムが 2,207 ドル、ロジウムが 10,357 ドルです。四年で、パラジウムは三倍を超え、ロジウムは十五倍になりました。触媒の値打ちは、中に入っている金属の種類と、そのときの相場で、まったく変わります。
CHAPTER 3磁石のレアアースと、これから
3-1 電動車の、新しい希少な金属
車が変わると、中に入っている希少な金属も変わります。排気の触媒の白金族に加えて、これから大事になるのが、モーターの磁石です。審議会の報告書の案は、こう書いています。電動車の駆動用のモーターに含まれる永久磁石には、希少なレアアースが含まれている。
回収は、まだ進んでいません。案は、これらの資源については、現状では使用済みの車などからの回収の量が限定的だ、としています。回収と選別の技術を高めること。回収した磁石から、レアアースを分けて精製する技術を開発すること。これが重要だ、と続けています。
動きは、始まっています。案には、日本自動車工業会が、モーターの磁石のリサイクルに向けて、「磁石リサイクル連絡会」を作った、とあります。
触媒は、長い年月をかけて、外して売る流れができました。磁石は、その流れが、まだありません。電動車が解体の現場に多く来るようになる前に、流れを作っておけるかどうか。そこが、これからの課題です。
3-2 国と欧州が、目標を置こうとしている
国は、金属の回収を、政策の柱に置き始めています。報告書の案によると、2026 年 4 月に作られた循環経済の行動計画に、メタルリサイクルの推進の戦略があります。鉄、アルミ、銅、永久磁石を、再生材を確保するために力を入れる資源と位置づけたものです。
案は、ベースメタルやレアメタルを含む重要な鉱物について、需要の拡大と、供給のリスクの高まりを踏まえた取り組みが重要だ、と書いています。永久磁石のリサイクルの仕組みの確立と、技術の開発を、求められる施策に挙げています。
欧州も、同じ向きです。環境省の資料に、欧州の新しい車の規則の案の概要があります。再生材を使う割合の決まりは、まずプラスチックから始まります。将来は、金属にも広げる予定だ、と書かれています。
磁石の元素も、名前が挙がっています。ネオジム、ジスプロシウム、プラセオジム、テルビウム、サマリウム、ホウ素。これらについて、欧州委員会は、規則が始まってから 35 か月後までに、最低の含有率の決まりを作れるかどうかを評価する、とされています。
決まりができれば、新しい車を作るのに、古い車から取った金属が要ることになります。使い終わった車は、処理するものから、材料を取り出すものへ、位置づけが変わっていきます。
3-3 残りかすの灰からも、取り出す
外しそこねた金属は、どうなるのでしょうか。車体と一緒に砕かれて、残りかすの中に混ざります。
残りかすの中の金属も、ある程度は回収されています。審議会の資料によると、2024 年度に、シュレッダーダストのうち 14.1 パーセントが、金属類として回収されました。スラグ、鉄、銅などです。
その先の技術も、開発されています。資料は、熱回収の施設の取り組みとして、燃やしたあとに出る燃え殻やばいじんから、貴金属を回収する技術の開発を挙げています。図には、金の回収が、開発の段階として書かれています。
けれども、順番ははっきりしています。混ざってから取り出すより、混ざる前に外すほうが、確かです。報告書の案も、処理の段階のより上流で、有用な部品と素材を回収することが重要だ、と書いています。
触媒を外す。磁石を外す。電池を外す。銅を含む部品を外す。解体の現場は、車の中の希少な金属が、最初に人の手で分けられる場所です。白金族の供給の多くを輸入に頼る国にとって、そこは、国内にある資源の入口です。
SOURCES出典
- 独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)「鉱物資源マテリアルフロー 2021 白金族(PGM)」
https://journal.jogmec.go.jp/content/300599978.pdf(2026-10-02 確認) - 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認) - 経済産業省・環境省 合同会議資料「自動車リサイクル制度の個別論点の深掘りについて(国内資源循環の推進)」(2026年1月13日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/064_03_00.pdf(2026-10-02 確認) - 環境省「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン【概要版】」(2025年3月)
https://www.env.go.jp/content/000302434.pdf(2026-10-02 確認) - 経済産業省・環境省・国土交通省「使用済自動車の再資源化等に関する法律の概要(自動車リサイクル法)」(平成14年7月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/pdf/003_11_01.pdf(2026-10-02 確認)
この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。