鈴木商会SUZUKI SHOKAI ・ TOKYO EDOGAWA
営業日のご案内営業時間 9:00~17:30
EN

トップ / 資料室 / 産業のすがた

輸入車と並行輸入車は、だれがリサイクルするのか

大きな輸入業者、小さな輸入業者、義務を負う者のいない車。三つの道を読む

大きな輸入業者、小さな輸入業者、義務を負う者のいない車。三つの道を読む

自動車リサイクル法は、車を作った者に、最後の処理の責任を負わせています。では、外国で作られた車は、だれが責任を負うのでしょうか。答えは、輸入した者です。けれども、輸入業者が小さい場合や、正規の輸入業者を通さずに入ってきた車の場合は、どうなるのか。法律は、そのための受け皿を用意しています。国と自動車リサイクル促進センターの資料で確かめます。

CHAPTER 1輸入車にも、同じ義務がある

1-1 輸入業者は、メーカーと同じ立場

自動車リサイクル法は、義務を負う者を「自動車製造業者等」と呼んでいます。環境省の説明では、これは自動車製造業者と輸入業者のことです。

義務の中身は同じです。自分が製造したか、輸入した車が使用済みになったとき、その車から出るフロン類、エアバッグ類、シュレッダーダストを引き取る。そして、リサイクルをする。フロン類は破壊する。

リサイクル料金を決めるのも、輸入業者です。輸入車の料金は、その車を輸入した会社が、車ごとに決めて公表します。持ち主は、新車を買うときにそれを預けます。

法律ができたときの国の資料は、当時の数を書いています。輸入車の販売は、一年に約 28 万台でした。新車の全体から見れば、小さな部分です。けれども、法律は、国産車と同じ仕組みに入れました。

法律が義務を負わせているのは、製造した者と、輸入した者です。輸入車の場合は、だれが日本に持ち込んだのかが、分かれ道になります。

1-2 解体に来る輸入車は、年に十万台

輸入車は、どれだけ解体に来ているのでしょうか。データBook は、メーカーごとの引取りの報告を載せています。国産の十二社のほかに、「輸入車等」という行があります。

2024 年度(令和 6 年度)の輸入車等は 100.9 千件でした。全体の 2,560.1 千件の、およそ 4 パーセントです。2015 年度は 122.2 千件でした。この十年、十万件から十二万件のあいだで動いています。

フロン類の引取りでも、同じ行があります。2024 年度に、輸入車等から引き取られたフロン類は 20,330 kg、台数にして 89,934 台でした。

輸出のほうも見ておきます。料金の返還を受けて輸出された輸入車等は、2024 年度に 140.1 千台でした。2015 年度は 98.7 千台です。国内で解体される輸入車より、もう一度外国へ出ていく輸入車のほうが多くなっています。

全体では、解体に回る車のほうが、輸出される車より多くなっています。輸入車等は、その逆です。メーカーごとに見ると、トヨタ自動車も、輸出のほうが多い形になっています。

1-3 大きな輸入業者は、チームに入っている

三つの品目のうち、いちばん量が多いのはシュレッダーダストです。メーカーと輸入業者は、これを処理するために、二つのチームを作っています。TH チームと ART です。

国の資料に、顔ぶれが載っています。どちらのチームにも、国産のメーカーと並んで、欧州の車を扱う大きな輸入業者が、それぞれ三社ずつ入っています。輸入業者だけの別のチームがあるわけではありません。

これらの輸入業者は、国産のメーカーと並んで、自分でリサイクルの責任を果たしています。再資源化率も、チームごとに公表されます。2024 年度は、TH チームが 96.5 パーセント、ART が 96.8 パーセントでした。

フロン類とエアバッグ類は、チームではなく、一つの機構がまとめて引き取っています。自動車再資源化協力機構です。メーカーと輸入業者から委託を受けて、一元的に引き取り、リサイクルと破壊をしています。

解体の現場から見れば、国産車でも輸入車でも、することは同じです。エアバッグ類を回収し、電子マニフェストで報告し、指定の引取場所へ渡します。違いは、その先で、だれが費用を受け取り、だれが処理の責任を負うか、です。

CHAPTER 2小さな輸入業者の車

2-1 一万台に満たない会社は、任せることができる

輸入業者が小さい場合は、どうでしょうか。年に数百台しか輸入しない会社が、自分で処理の仕組みを持つのは、たいへんです。

法律は、受け皿を用意しています。指定再資源化機関です。自動車リサイクル促進センターが、この役目をしています。データBook は、根拠の条文も書いています。法律の第 106 条の第 1 号です。

中身は、こうです。メーカーと輸入業者のうち、一年の製造か輸入の台数が 1 万台に満たない事業者は、指定再資源化機関と契約を結ぶことができる。契約を結ぶと、機関が、その会社の車のフロン類、エアバッグ類、シュレッダーダストのリサイクルを行う。

法律ができたときの資料は、これを安全網と呼んでいます。義務を果たすことがむずかしい小さな事業者に代わって、リサイクルを行う第三者の機関を設ける、という説明です。

国の資料でも、ART の顔ぶれの最後に、自動車リサイクル促進センターの名前が入っています。小さな会社の車のシュレッダーダストは、センターを通して、ART の中で処理されています。

2-2 契約している 29 社

2025 年 3 月 31 日の時点で、契約している会社は 29 社です。データBook に、名前と契約の日が載っています。

顔ぶれは、三つに分けられます。一つ目は、台数の少ない輸入車を扱う輸入業者です。高級車やスポーツカーの銘柄の日本法人が、いくつも入っています。

二つ目は、あとから日本の市場に入ってきた会社です。電気自動車のメーカーの日本法人が、2011 年 2 月と 2022 年 11 月に契約しています。いちばん新しい契約は、2025 年 1 月です。

三つ目は、乗用車ではない車を作る会社です。建設機械のメーカーや、特別な車体を作る会社が入っています。国内で少ない台数を作る乗用車のメーカーの名前もあります。

多くの会社の契約の日は、2004 年 10 月です。法律が本格的に動き出す三か月前です。一覧には、契約を終えた会社も、終えた日と一緒に載っています。契約は、会社ごとに、始まりと終わりが公表されているわけです。

2-3 引き取った量は、十年で五分の一に

機関がこれらの会社から引き受けた量は、大きく減っています。シュレッダーダストの引取りの台数を、十年ぶん並べます。

FIGURE小さなメーカーと輸入業者から引き受けたシュレッダーダストの引取台数(台)
15,3822015
13,3872016
5,8242017
5,2262018
4,5012019
3,5172020
2,9382021
2,9402022
3,2712023
3,3612024

2015 年度は 15,382 台でした。2017 年度に 5,824 台へ急に減り、2024 年度は 3,361 台です。重さでは 911 トンでした。

2017 年度に、三分の一近くまで減っています。契約の一覧には、2017 年 3 月 31 日に契約を終えた輸入業者が載っています。この二つに関係があるかどうかは、資料には書かれていません。

2024 年度のフロン類の引取りは 2,958 台、エアバッグ類は 3,161 台でした。エアバッグ類は、個数では 21,968 個です。取り外して回収したものが 6,955 個、車に付けたまま作動させたものが 15,013 個でした。どれも三千台ほどです。全国で一年に引き取られる二百五十万台あまりから見ると、千に一つほどの大きさです。

小さな数ですが、この受け皿があることで、台数の少ない会社は、処理の仕組みを自分で持たなくて済みます。

CHAPTER 3義務を負う者が、いない車

3-1 並行輸入車という、すき間

三つ目の道が、いちばん分かりにくいところです。義務を負う者が、そもそもいない車です。

正規の輸入業者を通さずに、個人や小さな業者が外国から持ち込んだ車。これが並行輸入車です。その車には、リサイクルの義務を負う正規の輸入業者がいません。

データBook は、こういう車を「義務者不存在車」と呼んでいます。再資源化を行うべきメーカーや輸入業者が存在しない車、という意味です。

法律は、ここにも受け皿を置いています。第 106 条の第 2 号です。指定再資源化機関が、この車のリサイクル料金を決める。そして、フロン類、エアバッグ類、シュレッダーダストのリサイクルを行う。

つまり、並行輸入車の料金は、メーカーではなく、公の機関が決めています。普通乗用車で車両重量が 1,350 kg の場合の例では、2024 年度の料金は三つの品目の合計で 19,080 円でした。2015 年度は 11,310 円です。2024 年度の内訳は、フロン類が 1,800 円、エアバッグ類が 5,960 円、シュレッダーダストが 11,320 円でした。預けるときには、このほかに、情報管理料金と資金管理料金が要ります。

3-2 年に四千台たらず

機関が引き受けている並行輸入車などは、どのくらいあるのでしょうか。シュレッダーダストの引取りの台数です。

FIGURE並行輸入車などのシュレッダーダストの引取台数(台)
7,0712015
7,6762016
8,6202017
7,7182018
6,7522019
5,4452020
5,0642021
4,6522022
4,0612023
3,9282024

2017 年度の 8,620 台がいちばん多く、そこから毎年減っています。2024 年度は 3,928 台でした。重さでは 1,121 トンです。

フロン類の引取りは 2,364 台、エアバッグ類は 2,421 台でした。フロン類のうち 55 台は、古い種類の CFC でした。エアバッグ類は、個数では 16,150 個です。取り外して回収したものが 4,386 個、車に付けたまま作動させたものが 11,764 個でした。

入口の数も減っています。機関が新しく料金を決めた台数は、2024 年度に 3,127 台でした。新車として登録するときが 2,722 台、引き取るときが 405 台です。2020 年度は 5,102 台ありました。

入口の数も、解体に来る数も、この数年は減っています。

3-3 会社がなくなっても、料金は残る

輸入業者が、日本から撤退したら、どうなるのでしょうか。その会社が売った車は、まだ走っています。

三つの品目については、心配は小さくなっています。リサイクル料金は、輸入業者の手元ではなく、資金管理法人に預けられているからです。環境省は、メーカーなどの倒産や解散でお金がなくなるのを防ぐため、と理由を説明しています。

処理をする者がいなくなれば、指定再資源化機関が引き受けます。機関の成績も公表されています。2024 年度の再資源化率は、エアバッグ類が 97.1 パーセント、シュレッダーダストが 97.2 パーセントでした。

けれども、この安全網が届かないものがあります。電動車の電池です。電池は三つの品目に入っていないので、料金の預託も、指定再資源化機関の受け皿もありません。

審議会の報告書の案は、そこを心配しています。国内の市場から撤退するメーカーが出た場合に、その車の電池の処理の費用が確保されないおそれ。メーカーの共同回収の仕組みに入っていない会社の車では、解体業者に高額な負担が生じるおそれ。輸入車を扱う解体の現場には、とくに関わりの深い話です。

SOURCES出典

  1. 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルデータBook 2024」
    https://www.jarc.or.jp/renewal/wp-content/uploads/2018/10/databook2024.pdf(2026-10-02 確認)
  2. 経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(令和7年9月5日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/060_s02_00.pdf(2026-10-02 確認)
  3. 環境省「自動車リサイクルの概要」
    https://www.env.go.jp/recycle/car/gaiyo.html(2026-10-02 確認)
  4. 経済産業省・環境省・国土交通省「使用済自動車の再資源化等に関する法律の概要(自動車リサイクル法)」(平成14年7月)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/pdf/003_11_01.pdf(2026-10-02 確認)
  5. 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認)

この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。

CONTRIBUTOR山岸 勇輝Yuuki YAMAGISHI

独立研究者(Independent Researcher)。公式の資料や統計など、一次の資料にあたって書くことを続けている。

yamagishiyuuki.com

← 車は、どの県で解体されているのかエアバッグとフロンは、なぜ必ず回収するのか →