解体の前に抜くもの、外すもの。九割の車に付いている二つの品目を数字で読む
車を解体するとき、鉄や部品より先に、必ず片づけるものがあります。エアコンの冷媒のフロン類と、エアバッグ類です。どちらも、そのまま砕いてしまうわけにはいきません。法律は、この二つを、メーカーが引き取る品目に決めました。だれが抜き、だれが外し、どれだけ集まっているのか。国と自動車リサイクル促進センターの資料で読みます。
CHAPTER 1解体の前に、片づけるもの
1-1 二つは、法律で名指しされている
自動車リサイクル法が、メーカーと輸入業者に引き取らせる品目は三つです。シュレッダーダスト、フロン類、エアバッグ類。このうち二つは、解体の前か、解体の最初に、車から取り出されます。
フロン類は、エアコンの冷媒です。大気に出ると、環境に影響を与えます。だから、車を壊す前に抜き取ります。抜き取ったものは、リサイクルではなく、破壊されます。
エアバッグ類は、作動していないものが車に残っています。そのまま車体を砕くのではなく、先に外すか、車に付けたまま作動させてから、次の工程へ送ります。
フロン類には、もとになった法律があります。フロン回収破壊法です。カーエアコンの部分は、2002 年 10 月に施行されました。自動車リサイクル法は、その枠組みを基本的に引き継ぎ、車のリサイクルの中で一体として扱うことにしました。
費用は、どちらも、持ち主が預けたリサイクル料金から出ます。回収した事業者は、メーカーや輸入業者に、回収の料金を請求できます。環境省の説明にも、フロン類回収業者と解体業者は回収の費用を請求できる、と書かれています。
1-2 九割の車に、付いている
この二つは、どれくらいの車に付いているのでしょうか。データBook に、引き取られた車のうち、装備のある車の割合が載っています。
| 年度 | フロン類 | エアバッグ類 |
|---|---|---|
| 2015 | 87.8 | 74.7 |
| 2018 | 89.5 | 82.5 |
| 2021 | 89.3 | 86.7 |
| 2024 | 89.9 | 88.9 |
2024 年度(令和 6 年度)は、フロン類が 89.9 パーセント、エアバッグ類が 88.9 パーセントでした。どちらも、ほぼ九割です。
フロン類は、十年前から九割近くで、ほとんど変わっていません。エアバッグ類は、2015 年度の 74.7 パーセントから、毎年上がってきました。エアバッグの付いていない古い車が、解体の現場から減ってきたことが分かります。
払い渡された料金の件数でも、同じことが見えます。2024 年度は、フロン類が 225 万件、エアバッグ類が 228 万件でした。2015 年度は、フロン類が 275 万件、エアバッグ類が 235 万件です。フロン類のほうが多かったのが、いまはエアバッグ類のほうが多くなっています。
金額では、2024 年度に、フロン類が 53 億円、エアバッグ類が 62 億円でした。
1-3 車が通る順番
使用済みの車は、決まった順番で、事業者のあいだを渡っていきます。法律の条文が、その順番を決めています。
引取業者は、車を引き取ったら、速やかに次へ渡します。エアコンが付いている車は、フロン類回収業者へ。付いていない車は、解体業者へ。条文は、そう書いています。
フロン類回収業者は、基準に従ってフロン類を回収します。回収したフロン類は、自分で再利用する場合を除いて、メーカーや輸入業者に引き渡します。メーカーなどは、引き取ったフロン類の破壊を、破壊業者に委託します。
フロン類を抜いた車は、解体業者に渡ります。解体業者は、エアバッグ類を回収して、メーカーなどに引き渡します。そのあとで、部品を外し、車体を破砕業者へ送ります。
フロン類回収業は、登録の制度です。2024 年度の終わりの登録は 7,817 でした。このうち、その年度に引取りの実績があった事業所は 3,175 です。国の Q&A は、解体業者が自分でフロン類を回収する場合は、解体業の許可とは別に、フロン類回収業の登録が要る、と説明しています。
CHAPTER 2フロン類
2-1 一台から、およそ 200 グラム
フロン類には、種類があります。古い車に使われていた CFC と、そのあとに広まった HFC です。データBook は、二つを分けて数えています。
| 年度 | HFC の台数(千台) | HFC の一台あたり(g) | CFC の台数(千台) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 2,694.2 | 263.5 | 47.3 |
| 2018 | 2,941.0 | 244.3 | 25.6 |
| 2021 | 2,667.1 | 217.1 | 11.0 |
| 2024 | 2,223.7 | 201.0 | 4.1 |
2024 年度に HFC が引き取られた車は 2,223.7 千台でした。一台あたりの重さは 201.0 g です。2015 年度は 263.5 g でした。十年で、一台から回収される量が、四分の一ほど減っています。
CFC の車は、ほとんど無くなりました。2015 年度の 47.3 千台から、2024 年度は 4.1 千台です。古い冷媒を積んだ車が、解体の現場から消えつつあります。
重さの合計は、国の資料に出ています。2024 年度に引き取られた HFC は 447,057.70 kg、CFC は 529.28 kg でした。合わせて、四百五十トン近くです。
引き取られたフロン類は、破壊の施設へ運ばれます。国の資料では、フロン類の破壊の施設は 8 か所です。メーカーと輸入業者の委託を受けた自動車再資源化協力機構が、一元的に引き取って、破壊を行っています。
2-2 再利用と、保管
回収したフロン類は、全部が破壊されるわけではありません。フロン類回収業者が、自分で再利用することも認められています。
2024 年度に、HFC が再利用された車は 21.6 千件でした。CFC は 0.6 千件です。引き取られた車の全体から見ると、百台に一台ほどです。
再利用されたフロン類は、メーカーに引き渡されません。その車のフロン類の料金は、使われずに残ります。このお金は、特定再資源化預託金等になります。2024 年度は 58 百万円でした。
もう一つ、保管という数があります。回収したフロン類を、ボンベに入れて手元に置いている状態です。2024 年度の終わりに、HFC は 811.8 千件、CFC は 125.6 千件が保管されていました。
国の Q&A によると、フロン類回収業者は、毎年度の終わりから 1 か月以内に、引き渡した量、再利用した量、保管している量を、電子マニフェストで報告します。抜いたフロン類がどこにあるかは、こうして追われています。
2-3 フロンではない冷媒が、増えている
ここ数年で、大きな変化が起きています。新しい冷媒です。HFO-1234yf という名前で、温暖化への影響がきわめて小さいものです。
この冷媒は、法律の上で、フロン類にあたりません。データBook は、こう説明しています。フロン類回収業者が回収する義務はない。フロン類の破壊についてのリサイクル料金も、設定されない。
この冷媒を積んだ車は、急に増えています。メーカーの装備の情報をもとにした集計では、2015 年度は 2,553 台でした。2019 年度に 663,598 台、2021 年度に 1,951,332 台、2024 年度は 3,832,353 台です。
十年で、千倍を超える増え方です。車は平均で 17.0 年使われてから解体に回るので、この車が解体の現場に多く来るようになるのは、まだ先のことです。データBook は、欧州の市場を中心に普及が進み、国内でも一部の車種で販売が始まった、と経緯を書いています。
審議会の報告書の案は、フロン類の回収と破壊による温室効果ガスの削減の効果が、減る傾向にある、と書いています。回収と破壊が着実に行われるようになったことと、温室効果の低い冷媒への切り替えが進んだことが、理由に挙げられています。
CHAPTER 3エアバッグ類
3-1 外すか、車の上で作動させるか
エアバッグ類の処理には、二つの方法があります。国の Q&A は、どちらかを行うこと、と書いています。
一つは、取外回収です。車に付いているエアバッグ類を取り外し、ガスを出す部分だけの状態にして、指定の引取場所へ運びます。
もう一つは、車上作動処理です。車に付けたままの状態で、エアバッグ類を作動させます。作動したあとの部品は、車体と一緒に破砕され、金属として回収されます。
2024 年度は、車上作動処理が 1,639.5 千台、取外回収が 591.0 千台でした。作動させる方法が、全体の 72 パーセントです。
取外回収は、増えています。2015 年度は 341.5 千台でした。十年で、七割ほど増えました。作動処理の割合は、2015 年度の 81 パーセントから、少しずつ下がっています。
個数では、もっと大きな数になります。国の資料によると、2024 年度に取り外して回収されたのは 2,711,173 個、車の上で作動させたのは 7,863,762 個でした。一台の車に、いくつものエアバッグ類が付いているからです。
3-2 車の上で作動させるには、契約が要る
車上作動処理は、だれでもできるわけではありません。国の Q&A は、要件を書いています。
まず、契約です。自動車再資源化協力機構を通して、メーカーや輸入業者と、委託の契約を結びます。メーカーなどは、作動処理ができる環境にある解体業者かどうかを確かめたうえで、契約を結びます。
確かめる中身は、二つです。一つは、まわりの環境と作業の環境を考えて、必要な防音の対策と、発生するガスなどの対策がされていること。もう一つは、メーカーの出す処理の情報にもとづいて、まとめて作動させる道具などを使い、安全と環境に配慮して作業できる体制であること。
記録も求められます。作動処理の実績は、管理の台帳に記録します。メーカーや輸入業者による監査が行われる場合がある、とも書かれています。
国の資料では、車上作動を行う事業所は 1,124、事業者は 1,052 です。解体業の許可の数は 4,081 ですから、その四分の一ほどにあたる数です。取り外したものを受け入れる再資源化の施設は、10 か所です。
3-3 再資源化率と、「無かった」という報告
エアバッグ類にも、再資源化率の基準があります。85 パーセントです。2024 年度の実績は、メーカーによって 96 から 97 パーセントでした。報告書の案によると、基準は 2005 年度の時点で、すでに達成されていました。
この率は、取り外して回収したものについての数です。2024 年度は、施設が引き取った 1,778,239.40 kg のうち、1,720,464.60 kg が再資源化されました。車の上で作動させたものは、車体と一緒に金属として回収されるので、全量が再資源化されたとみなされ、率の計算には入りません。
最後に、もう一つの数を見ます。メーカーの出荷のときにはエアバッグ類が付いていたのに、引き取ったときには無かった、という報告です。事故で作動したあとの車などが、これにあたります。
データBook によると、2024 年度は、出荷のときに付いていた 2,374.8 千件のうち、99.8 千件が「無かった」と報告されました。4.2 パーセントです。この車のエアバッグ類の料金は使われないので、特定再資源化預託金等になります。2024 年度は 231 百万円でした。
報告書の案は、ここに注意を向けています。廃車ガラのまま輸出された車では、この割合がふつうの約 2 倍以上だった、というものです。回収をせずに、無かったと報告している可能性がある、と案は書いています。エアバッグ類の回収は、解体業者が正しく仕事をしているかどうかを、数字で見られる場所でもあります。
SOURCES出典
- 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルデータBook 2024」
https://www.jarc.or.jp/renewal/wp-content/uploads/2018/10/databook2024.pdf(2026-10-02 確認) - 経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(令和7年9月5日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/060_s02_00.pdf(2026-10-02 確認) - 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認) - 経済産業省・環境省ほか「自動車リサイクル法に関する主なQ&A 解体業者編」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/automobile_recycle/other/pdf/explanation/kaitaiQA.pdf(2026-10-02 確認) - 環境省 会議資料「自動車リサイクル法の概要」(参考資料4)
https://www.env.go.jp/press/cfc_conf01/ref04.pdf(2026-10-02 確認) - 経済産業省・環境省・国土交通省「使用済自動車の再資源化等に関する法律の概要(自動車リサイクル法)」(平成14年7月)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/pdf/003_11_01.pdf(2026-10-02 確認) - 環境省「自動車リサイクルの概要」
https://www.env.go.jp/recycle/car/gaiyo.html(2026-10-02 確認)
この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。