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捨てられた車は、どこへ消えたのか

二十一万台から四千台へ。不法投棄と不適正保管の二十年と、離島を支える仕組み

二十一万台から四千台へ。不法投棄と不適正保管の二十年と、離島を支える仕組み

自動車リサイクル法ができる前、全国には、捨てられたり、積まれたままになったりした車が、二十一万台あまりありました。いまは四千台あまりです。ただ、ゼロにはなっていません。残っている車は、なぜ片づかないのか。船で運ばなければならない離島の車は、だれが支えているのか。国と自動車リサイクル促進センターの資料で読みます。

CHAPTER 1法律ができる前の風景

1-1 全国に、二十一万台

国は、不法投棄と不適正保管の車の数を、毎年まとめています。都道府県と、保健所を置く市からの報告を集めたものです。いちばん古い数は、法律が本格的に動き出す直前の、2004 年 9 月末のものです。

そのとき、全国に 218,359 台ありました。内訳は、不適正保管が 195,860 台、不法投棄が 22,499 台です。

国の資料は、この二つを分けて数えています。捨てられた車と、決まりに合わない形で置かれている車です。数の九割は、不適正保管のほうでした。

離島だけの数も出ています。全国の 218,359 台のうち、離島が 16,707 台でした。不適正保管が 13,503 台、不法投棄が 3,204 台です。

大きな山もありました。100 台を超える案件は、全国で 450 件、131,709 台です。全体の六割が、百台を超える大きな山にあったことになります。

1-2 なぜ、車は捨てられたのか

理由は、お金です。環境省の説明は、こう書いています。最終処分の費用が上がり、鉄スクラップの値段が下がった。そのため、使用済みの車を渡すときに、渡す側がお金を払う「逆有償」が目立つようになった。不法投棄と不適正な処理の心配が出てきた。

車を手放すのにお金がかかる。そのことが、捨てたり、積んだままにしたりする動機になりました。

象徴になった場所があります。香川県の豊島です。解体業者の団体である NGP は、豊島を、自動車リサイクル法ができるきっかけになった不法投棄の事件が起こった場所、と書いています。NGP は、いまも島の環境の保全と再生の活動に寄付を続けています。

法律は、この流れを、お金の向きを変えることで止めようとしました。処理に困るものの費用を、持ち主が先に預ける。そうすれば、使用済みの車は、また値の付くものになる。

法律ができたときの国の資料は、もう一つの手も書いています。自動車重量税の還付です。車を引取業者に渡す経済的な動機を用意して、不法投棄を防ぐ、という目的でした。

1-3 半年で三分の一減り、二十年で 98 パーセント減った

効きめは、すぐに出ました。法律が本格的に動き出して三か月後の、2005 年 3 月末。全国の数は 140,436 台になっていました。半年前より 35.7 パーセント少ない数です。不適正保管は 37.4 パーセント減り、不法投棄は 22,499 台から 17,837 台へ、20.7 パーセント減りました。

TABLE不法投棄と不適正保管の車の台数
時点全国うち不適正保管うち不法投棄うち離島
2004 年 9 月末218,359195,86022,49916,707
2005 年 3 月末140,436122,59917,83713,957
2021 年 3 月末5,7545,194560552
2025 年 3 月末4,6663,914752650

2025 年 3 月末は 4,666 台です。2004 年 9 月末と比べて、97.9 パーセント減りました。離島は 16,707 台から 650 台になりました。離島の内訳は、不適正保管が 390 台、不法投棄が 260 台です。

審議会の報告書の案は、減った理由をこう説明しています。持ち主がリサイクル料金を負担するようになって、使用済みの車の流通の値段が上がった。そのため、引取業者へきちんと引き渡されるようになった。

鉄スクラップの値段が上がったことも、背景にあります。案は、鉄スクラップの値段は使用済みの車の値打ちを決める大事な要素で、法律の施行と前後して上がった、と書いています。

値の付くものは、捨てられません。二十年の数字は、それを示しています。

CHAPTER 2いま残っている車

2-1 4,666 台の中身

残っている 4,666 台を、もう少し細かく見ます。不適正保管が 3,914 台、不法投棄が 752 台です。

国の資料は、この数を、法律の前からあるものと、後に出たものに分けています。法律の施行の前からあるものが 1,684 台。施行のあとに出たものが 2,982 台です。

つまり、残っている車の六割あまりは、法律ができたあとに新しく出たものです。古い山が片づかずに残っているだけではありません。

新しく出る数も分かります。国の資料では、施行のあとに出た 2,982 台のうち、2023 年度に出たものが 320 台とされています。報告書の案は、2010 年度からあとも、毎年数百台ほどの新しい発生が続いている、と書いています。

全体の数は、ここ数年、ほとんど動いていません。2023 年 3 月末が 4,777 台、2024 年 3 月末が 4,613 台、2025 年 3 月末が 4,666 台です。最後の一年は、53 台増えました。2021 年 3 月末は 5,754 台、2022 年 3 月末は 5,281 台でしたから、減り方はゆるやかになっています。片づく数と、新しく出る数が、つり合っている状態です。

2-2 百台を超える山は、四つ

大きな案件は、ずいぶん減りました。100 台を超える案件は、2004 年 9 月末に 450 件、131,709 台ありました。法律が動き出した直後の 2005 年 3 月末には、258 件、72,516 台です。

2022 年 3 月末には、9 件、1,799 台でした。2025 年 3 月末は、4 件、985 台です。国の資料には、四つの場所が載っています。北海道に二つ、徳島県に一つ、沖縄県に一つです。

いちばん大きいものは 496 台で、不適正保管です。備考には、自治体が指導を続けている、と書かれています。沖縄県の 100 台は、2024 年度に新しく加わったもので、調査中とあります。

数は四つですが、その四つで、全国の 4,666 台の二割を占めます。残りは、百台に満たない案件が、各地に散らばっていることになります。

大きな案件の数は、この数年、三つか四つで動いています。2023 年 3 月末が 4 件、2024 年 3 月末が 3 件、2025 年 3 月末が 4 件です。一つ片づくと、別の一つが百台を超える。そういう動き方をしています。

2-3 なぜ、片づかないのか

残っている車は、なぜ片づかないのでしょうか。自動車リサイクル促進センターは、50 台を超える不適正保管の案件について、理由を分けて数えています。対象は 2,192 台です。

TABLE50 台を超える不適正保管の車が片づかない理由(2024 年末)
理由台数割合
片づけたあとも、持ち主が事業を続け、車を買い入れている70532 パーセント
木を切ったり道を広げたりする大きな費用が要る46121 パーセント
自治体が、原因者と片づけの調整をしている33115 パーセント
許可のない解体業者が保管している33015 パーセント
持ち主が自分の財産だとして、片づけに応じない25312 パーセント
車と土地の持ち主の権利に、法律上の問題がある683 パーセント
原因者の片づけが遅く、車が残っている442 パーセント

いちばん多いのは、持ち主が事業を続けていて、売り買いで台数が増えたり減ったりしている場合です。705 台で、三分の一を占めます。

持ち主が、これは自分の財産だ、と言っている場合もあります。253 台です。捨てたのではなく、持っているのだ、という言い分です。権利の上の法律の問題がからむ場合も、68 台あります。

センターは、2024 年度に 173 台の片づけと適正な処理に関わりました。自治体と一緒に原因者に説明し、業界の団体に見積もりと処理を頼む、というやり方です。それでも、対象の車の 36 パーセントは、自治体による立入りや片づけの支援が要る状況だ、とセンターは書いています。

CHAPTER 3支える仕組み

3-1 自治体が片づけたときの支援

捨てられた車を最後に片づけるのは、自治体です。原因者が片づけないとき、自治体は、廃棄物処理法にもとづいて、代わりに片づけることができます。行政代執行です。

その費用を支える仕組みが、自動車リサイクル法にあります。指定再資源化機関が、片づけと処理にかかった費用の 8 割を上限に、お金を出します。もとになるのは、使われなかったリサイクル料金です。

これまでの実績は、三件です。データBook に、すべて載っています。

TABLE不法投棄の片づけへの支援の実績
自治体時期片づけたもの処理の費用支援の額
北海道札幌市2007 年199.6 トン6,541 千円5,233 千円
鹿児島県奄美市2008 年330.0 トン14,500 千円11,600 千円
富山県滑川市2013 年普通自動車 1 台151 千円121 千円

三件を合わせて、支援の額は 17 百万円です。どれも、処理の費用の 8 割にあたる額が出されています。2024 年度の実績はありません。二十年で三件というのは、少ない数です。

なぜ少ないのかは、資料には書かれていません。センターは、2024 年度に、不法投棄を防ぐための、自治体の担当者に向けた研修に 7 百万円を使っています。基礎の知識の研修と、現場での研修です。

3-2 離島の車は、船で運ぶ

離島には、別の苦労があります。データBook は、離島は本土や本島と違い、使用済みの車を適正に処理するために海上輸送が必要になる、と書いています。

その費用も、支える仕組みがあります。市町村からの申請を受けて、海上輸送の費用の 8 割を上限に、お金を出します。対象になる市町村は 125 あります。

FIGURE離島対策の支援を受けた車の台数(台)
21,7192015
21,8732016
23,5992017
24,5042018
25,5492019
25,3902020
27,9312021
23,6322022
21,7702023
20,0242024

2024 年度は、77 の市町村で、20,024 台が支援を受けました。支援の額は 109,497 千円です。2021 年度の 27,931 台がいちばん多く、そこから減っています。

一台あたりの輸送の費用は、平均で 6.8 千円でした。島から出すのに、それだけ余分にかかります。支援の額は、2015 年度が 92,220 千円でした。台数は減っても、額は十年前より多くなっています。

離島の不法投棄と不適正保管は、2004 年 9 月末の 16,707 台から、2025 年 3 月末は 650 台になりました。法律を作るときに、とくに大きな問題とされていた場所です。船の費用を支える仕組みが、その減り方を支えています。

3-3 災害の車と、これから

最近、新しい課題が加わりました。災害で壊れた車です。

報告書の案は、こう書いています。焼けたり、水に浸かったり、落ちたりした車は、ふつうの使用済みの車に比べて、資源としての値打ちが低い。焼けた車は自分で走れないので、片づけと運搬に重機や公の支援が要ることが多い。

2024 年 1 月の能登半島地震では、国、自治体、関係の団体、事業者が連携して、被災した車の片づけと処理にあたりました。センターの資料には、朝市の火災で被災した 81 台の例が載っています。センターは、その経験をもとに、自治体向けの手引きと事例集を作り直しました。

値の付かない車は、放っておけば残ります。これは、法律ができる前の不法投棄と、同じ形です。だから、だれかが費用を支える仕組みが要ります。

案は、二つのことを求めています。いまの不法投棄と不適正保管への取り組みを続け、強めること。そして、残っている車が減らない理由や、これからの被災車両の増え方を踏まえて、必要なら追加の策を考えること。使われなかったリサイクル料金の使い道も、その中で検討する、としています。

SOURCES出典

  1. 経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(令和7年9月5日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/060_s02_00.pdf(2026-10-02 確認)
  2. 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルデータBook 2024」
    https://www.jarc.or.jp/renewal/wp-content/uploads/2018/10/databook2024.pdf(2026-10-02 確認)
  3. 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「自動車リサイクルに関するデータ/活動実績 等」(2025年10月14日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/061_04_00.pdf(2026-10-02 確認)
  4. 産業構造審議会・中央環境審議会 合同会議「自動車リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf(2026-10-02 確認)
  5. 経済産業省・環境省・国土交通省「使用済自動車の再資源化等に関する法律の概要(自動車リサイクル法)」(平成14年7月)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/pdf/003_11_01.pdf(2026-10-02 確認)
  6. 環境省「自動車リサイクルの概要」
    https://www.env.go.jp/recycle/car/gaiyo.html(2026-10-02 確認)
  7. NGP日本自動車リサイクル事業協同組合 プレスリリース「NIKKEI脱炭素アワード2023 にて奨励賞を受賞」
    https://www.ngp.gr.jp/press/p_info/71.php(2026-10-02 確認)

この記事は、上の資料の原文を確かめたうえで書いています。台数や割合などの数は、資料に書かれているものだけを使いました。制度や手続き、税金の決まりは変わることがあります。実際の手続きは、運輸支局、税務署、都道府県の窓口などでお確かめください。

CONTRIBUTOR山岸 勇輝Yuuki YAMAGISHI

独立研究者(Independent Researcher)。公式の資料や統計など、一次の資料にあたって書くことを続けている。

yamagishiyuuki.com

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